リビドー(libido)とは、心理学者のフロイトが提唱した概念です。
フロイトは、人間が生まれながらに持っている欲動が、性的なものから来ているとします。それをリビドーと呼び、成長とともに発達すると考えます。
そこで今回は、フロイト心理学におけるリビドーとは何か、意味をわかりやすくまとめました。リビドーの発達段階についても、それぞれ簡単に紹介しています。
また固着や退行など、リビドーの発達段階における問題も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
リビドーとは?フロイト心理学における意味・使い方を解説
そもそもリビドーとは、ラテン語で欲望を表す言葉で、「性的エネルギー(性衝動)」を意味しています。精神科医のジークムント・フロイトが提唱した概念です。
フロイトは、人間が生まれながらに持っている本能エネルギー(欲動)について、性的欲求から来るものだと考えます。それをリビドーと呼びました。
【リビドーとは】
人間が生まれながらに持っている欲動の原動力となる性的エネルギー(性衝動)のこと。フロイトが提唱した概念で、ラテン語で「欲望」を意味する。
ちなみに研究者によって、リビドーという言葉の使い方は異なります。たとえば心理学者のユングは、リビドーを性的なものに限定せず、より広い意味で使用しています。
リビドーの発達段階をわかりやすく紹介
リビドーは、年齢とともに発達するのが特徴です。全部で5段階あり、それぞれの過程で欲求が満たされることにより、次の段階に移行すると考えられています。
フロイトはリビドーの発達段階について、身体の各部位の名称を使い、「口唇期・肛門期・男根期・潜伏期・性器期」と表現しました。
ここからはそれぞれの発達段階について、簡単に解説します。
口唇期 | 0歳〜1歳半頃 |
肛門期 | 1歳半〜3歳頃 |
男根期 | 3〜6歳頃 |
潜伏期 | 6〜12歳頃 |
性器期 | 6〜12歳頃 |
口唇期:0歳〜1歳半頃
生まれてから1歳半くらいまでの時期を、フロイトは口唇期(こうしんき)と呼んでいます。
この時期は、口の周りにリビドーが集中すると言われており、母親のおっぱいを吸うことが快感(リビドー)になっています。
そして母親との信頼関係を形成しながら、周りの環境にも馴染んでいくのが特徴です。卒乳すると口唇期も終了して、次の発達段階へと進みます。
肛門期:1歳半〜3歳頃
1歳半〜3歳頃になると、排泄行動による肛門刺激がリビドーになります。この時期について、フロイトは肛門期と呼びました。
肛門期の子どもは、トイレットトレーニングを通して、自己をコントロールする訓練をします。同時に親から、排泄物が不潔であるという「しつけ」を受けるのが特徴です。
このとき子どもには、親のしつけに従うか・反抗するかという葛藤が生じます。トイレットトレーニングに手間取ると、几帳面や頑固などの特徴が形成されます。
排泄のコントロールができるようになると、肛門期が終了して、次の発達段階に進みます。
男根期:3〜6歳頃
3〜6歳くらいまでを、フロイトは男根期と呼んでいます。ちょうど自分の性器に興味を持ち始めて、手で触ったり人に見せたりする時期です。
この頃の子どもは、異性の親に対する愛情と、同性の親に対する敵意を抱くようになります。男の子の場合は、同時に「父親に去勢されるのでは」という不安にも駆られます。
この心理的葛藤のことを、エディプス・コンプレックスといいます。そのため男根期は、エディプス期と呼ばれることもあります。
※女の子の場合、男根への憧れや、母親への敵意(なぜ自分に男根がないのか)という去勢コンプレックスが生じます。これをエレクトラ・コンプレックスといいます。
潜伏期:6〜12歳頃
小学生になると、リビドーは一時的に抑圧されます。これを潜伏期といい、年齢だと6〜12歳くらいの時期を指しています。
この頃の子どもは、気の合う友達と遊ぶようになり、鬼ごっこやかくれんぼなど集団で楽しむ様子も見られます。そしてルールを決めたり、けんかしたりしながら、社会性を学んでいきます。
そのため潜伏期は、次の性器期に向けての準備期間といっても良いでしょう。
性器期:12歳〜成人
12歳以降の子どもを、フロイトは性器期と呼んでいます。これまでの口唇期・肛門期・男根期といった幼児性欲が、統合される時期のことです。
年齢的にはちょうど思春期で、精神的にも肉体的にも発達します。リビドーも生殖が目的となり、性対象を求めるようになります。
このような発達段階を経て、リビドーは移行していきます。
リビドーの発達段階における問題
それぞれの発達段階で、欲求が満たされることにより、リビドーはスムーズに移行できます。しかし場合によっては、うまく移行できず、「固着」や「退行」が生じます。
ここではそれぞれの特徴をわかりやすく解説します。
固着:リビドーの移行ができずに引きずってしまうこと
固着とは、成長してからも特定の段階の欲求を引きずってしまうことです。
たとえば口唇期に、乳離れが早すぎて欲求が満たされなかった場合、爪を噛む・喫煙を過度に求めるなどの症状が出るイメージです。
ちなみに欲求が満たされすぎても、固着の症状が出る可能性があります。リビドーがスムーズに移行するためには、発達段階に応じた欲求がバランスよく満たされないといけません。
退行:以前の発達段階に戻ってしまうこと
退行とは、何らかのショックを受けて以前の発達段階に戻ってしまうことです。
たとえば自分の納得できないことがあると、子どものように駄々をこねる人がいます。また赤ちゃんのように甘えたり、泣いたりすることもあるかもしれません。
そして固着や退行は、神経症につながると考えられています。そのためリビドーは、精神分析をするフロイトにとって、基本となる概念のひとつだったといえるでしょう。
フロイト心理学におけるリビドーの意味・使い方まとめ
今回はリビドーとは何か、意味をわかりやすくまとめました。
フロイト心理学におけるリビドーの意味は、以下のとおりです。研究者によって、リビドーという言葉の使い方は異なります。
【リビドーとは】
人間が生まれながらに持っている欲動の原動力となる性的エネルギー(性衝動)のこと。フロイトが提唱した概念で、ラテン語で「欲望」を意味する。
またリビドーには、全部で5つの発達段階があります。成長とともに次の段階へ進みますが、スムーズに移行できないと、固着や退行が起こるのも特徴のひとつです。
リビドーについて理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
リビドーに関する参考書籍
リビドーに関する書籍として、『決定版 面白いほどよくわかる!心理学』などがあります。
これは心理学の歴史や専門用語をまとめた本で、リビドーについても解説されています。発達段階や固着・退行も、イラストでわかりやすくなっていました。
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