心理学のスキーマとは?スキーマ理論の意味・具体例をわかりやすく解説

スキーマの意味とは

スキーマ(schema)とは、過去の経験・記憶によって構造化された概念のことです。スキーマは日常生活になじみがあるもので、心理療法としても用いられています。

たとえば、ここにりんご・みかん・ぶどう・バナナの画像が並べてあります。おそらくほとんどの人は、顔にも見えたでしょう。

スキーマの例

その理由は「上の方に目が2つ・真ん中に鼻が1つ・下の方に口が1つ」という顔のスキーマを、私たちがもっているためです。

ここではスキーマとは何なのか、意味をわかりやすく解説しています。またスキーマ理論の特性や、スキーマ療法についても触れているので、ぜひ参考にしてみてください。

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心理学のスキーマとは?意味をわかりやすく解説!

そもそもスキーマとは、バートレット(Bartlett,1932)によって提唱されたものです。過去の経験・記憶によって構造化された概念のことで、認知心理学で用いられます。

たとえば、「手を使わずにボールを蹴るスポーツ」「ゴールを決めると得点が入る」といえば、多くの人はサッカーを思い浮かべるでしょう。少なくとも、野球やバスケではないと思うはずです。

【スキーマとは】
過去の経験・記憶によって構造化された概念のこと。ある物事に関する経験・記憶が集まることで、それらをひとつの一般的知識として捉えられるようになる。

つまりスキーマは「抽象化された知識のまとまり」と言えます。またスキーマが形成されていると、情報が不足している状況でも、ある程度は推測できるようになります。

たとえばAmazonで購入した経験がある人は、楽天・Yahoo!ショッピングを使ったことがなくても、商品を選んで注文するという手順は、何となくイメージできるはずです。

概念スキーマの形成例
レストランテーブル・キッチン・メニューなど
学校先生・生徒・校舎・授業・教室など
りんごフルーツ・食べ物・赤い・丸いなど

スキーマ理論の特性を理解するポイント

ここではスキーマの特性について、ポイントを3つまとめてみました。スキーマの意味を理解するためには、どれも重要な項目です。

主なポイント

・動作や出来事にも形成される
・埋め込み構造になっている
・変数を持っている

動作や出来事にもスキーマが形成される

スキーマは具体的な物体だけでなく、動作や出来事など、抽象的なものにも形成されます。たとえば以下の文章を比較して、車とバイクのスピードを想像してみてください。

・車とバイクが衝突した
・車とバイクが接触した
・車とバイクがぶつかった

おそらく「衝突した」という文章を見て、1番速いと感じたのではないでしょうか。これは激しい・強いなどのイメージが、衝突というスキーマを形成しているためです。

つまり日常会話やメッセージのやり取りにも、スキーマが活用されていることになります。またうまく言葉を選べば、相手に与える印象をコントロールすることもできるでしょう。

埋め込み構造になっている

「車とバイクが衝突した」という文章から、車の窓が割れている・ドアがへこんでいるなどと、想像した人もいるでしょう。

これは車スキーマのなかに、窓・ドアなどのスキーマが埋め込まれているためです。そして文章では読み取れない情報を、経験と記憶に基づいて、自動的に推測しています。

またスキーマは階層構造を持っており、他のスキーマの下位に埋め込むこともできます。

スキーマの埋め込み構造(階層構造)

変数を持っている

スキーマは変数を持っており、あらゆる情報にも対応できるようになっています。

たとえば「ボールを遠くに飛ばす」という文章なら、ボールの種類・人などが変数です。変数を別のものにすると、意味も変わってきます。

スキーマの変数
例:人が変数の場合「ボールを飛ばす」の意味
野球選手バットで遠くに飛ばす
サッカー選手ボールを蹴って遠くに飛ばす
ゴルフ選手ゴルフボールを遠くに飛ばす

スキーマは過去の経験・知識によって形成されるもので、人それぞれ異なります。しかし変数を持っているからこそ、自分が体験していない内容でも、意味を理解できるわけです。

スキーマ療法とは?特徴・やり方について

スキーマ療法とは、問題の根本にあるスキーマに焦点を当てて、解決を目指す心理療法です。

たとえば幼いころ、親に捨てられた経験があると、「目の前にいるこの人もいつか見捨てられる」というスキーマが形成されます。その結果、人間不信になってしまいます。

この場合、どうやったら信用できるかではなく、親に捨てられた経験に注目するのがスキーマ療法です。自分と向き合い、新しいスキーマを身につけられるか、一緒に考えます。

しかし過去の経験を思い出して、自分と向き合うことは大変なことです。そのため、基本的にはカウンセリングを行いつつ、周りのサポートがある状態で行います。

参考:スキーマ理論を活用した考え方

心理学においては、スキーマ理論をベースにした考え方もあります。そのため、一緒に覚えておくと便利でしょう。

ここでは「スクリプト」と「物語スキーマ(物語文法)」についてまとめてみました。スキーマの意味を考えながら、確認してみてください。

スクリプト

スキーマの一連の流れを「スクリプト」と言います。

代表的な例文として挙げられるのが、レストランでのスクリプトです。レストランには、以下のような一連の流れがあります。

レストランに入る→席に座る→メニューを見る→注文をする→食事をする→お会計をする

ほとんどの人は、このスクリプトを理解しています。そのため、初めてのお店に行っても、迷うことなく行動できるでしょう。

また席に近づいてくる人が「店員」だとわかったり、ボタンを押せば店員が来るとわかったりするのも、レストランスクリプトがあるためです。

スキーマは知識のまとまり、スクリプトは知識の台本と覚えておいてください。

物語スキーマ(物語文法)

物語スキーマとは、文章理解の過程を、スキーマ理論によって捉えたものです。文章の典型的な構造を意味しています。

物語スキーマは、ラメルハート(Rumelhart,1975)によって提唱されました。そして物語スキーマを、ソーンダイク(thorndyke,1977)らが改良して、物語文法を提案しています。

【物語スキーマ】
ラメルハート
物語は「開始部・展開部・終末部」という大きな一般構造をもつ
【物語文法】
ソーンダイク
物語は「設定」「事件」「目標」「試行」「解決」など細かく分類される

これらは簡単に説明すると、物語スキーマが活性化されることで、物語の展開が把握しやすくなるというものです。読解能力が向上して、難しい物語も読みやすくなります。

そのため国語の学習など、教育現場でも注目されています。しかし構造化することで、表面的な部分しか読み取れず、学習効果について疑問をもつ意見もありました。

ここでは、物語スキーマ・物語文法の是非は問わず、あくまでも考え方のひとつとして紹介します。

心理学におけるスキーマの意味まとめ

ここでは心理学におけるスキーマ理論について、意味をわかりやすくまとめてみました。

スキーマの説明は以下のとおりで、「動作や出来事にも形成される」「埋め込み構造になっている」「変数をもっている」などの特性があります。

【スキーマとは】
過去の経験・記憶によって構造化された概念のこと。ある物事に関する経験・記憶が集まることで、それらをひとつの一般的知識として捉えられるようになる。

またスキーマは日常生活になじみがあるもので、心理療法としても用いられています。意味の理解を深めるためにも、ぜひここで解説した内容を参考にしてみてください。

スキーマに関する書籍紹介

スキーマ療法に関する書籍として、「自分でできるスキーマ療法ワークブック」などがあります。

これはセラピストがいなくても、自分ひとりで実践できる内容です。Book1で取り組む準備、Book2で本格的なやり方がまとめられています。

より詳しくスキーマ療法を学びたい人、具体的なやり方を知りたい人は、ぜひ読んでみてください。

スキーマに関する参考文献

記憶に及ぼすスキーマの影響

特性概念の可得性と自己スキーマが対人記憶に及ぼす効果

幼児の物語理解に影響する要因

※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。

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