劣等コンプレックスとは、「劣等感」と「コンプレックス」を組み合わせた言葉です。一般的には同じ意味だと認識されがちですが、心理学の世界では少し異なります。
そこで今回は、劣等コンプレックスとは何か、意味をわかりやすくまとめました。劣等感と劣等コンプレックスの違いや、克服方法についても簡単に紹介しています。
また劣等コンプレックスの例も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
劣等コンプレックスとは?意味をわかりやすく解説
そもそも劣等コンプレックスとは、心理学者のアルフレッド・アドラーが提唱した概念です。自分が他者より劣っていると感じながら、そうと認めないことを表します。
【劣等コンプレックスとは】
自分が他者より劣っていると感じながら、それを認めないこと。すべての人は何らかの劣等感をもち、それを補償しようとして「権力への欲求」が働くとした。
そしてアドラーは、人間にとって根源的な欲望は「権力への欲求」であると考えます。このアドラーの考えは理解しやすく、多くの人に受け入れられました。
特にフロイトの性欲説に反発していた人から、評価されていたのが特徴です。フロイトは人間の根源的な欲望が「性欲」だと考えますが、アドラーはこれを批判して、自説を主張しました。
アドラーは劣等感を「器官劣等」から考えた
アドラーは最初、身体的な原因から劣等感を説明しようとします。人間は誰しも劣等的な器官を持っており、それを補償して、優越性を求めるような働きが生じるという考えです(器官劣等)。
たとえば体内に2つある腎臓のうち、ひとつが欠損すると、もうひとつが強力になって機能を補おうとすることがあります。また欠損した腎臓そのものが、より強力になるケースもあるでしょう。
アドラーはこの身体的な現象を、心理的にも拡大して捉えます。人々は誰しも劣等性を持っており、それを補おうとして、権力を欲求するとしたのです。
しかし後年になると、アドラーは器官劣等の考えをあまり強調しなくなります。
劣等コンプレックスの例を簡単に紹介!
ここでは劣等コンプレックスの例を、簡単にまとめてみました。
【劣等コンプレックスの例】
・知能が低いことに対する劣等感
・社会的地位が低いことに対する劣等感
・身体的障害があることに対する劣等感
兄弟姉妹がいる人は、成績や成長などを比較されたことがあるでしょう。また近所に住む同年代の人と、比べられた経験があるかもしれません。
ほかにも性別・人種・経済状況などで、不平等に扱われた際にも、劣等コンプレックスを引き起こす可能性があります。
「劣等感」と「劣等コンプレックス」の違い
劣等感と劣等コンプレックスの違いは、「自分が劣等であると認めるか」にあります。
たとえば運動会で、自分は走るのが苦手だからと応援役になり、一緒に楽しく過ごす人がいるとします。これは劣等を認めていますが、劣等コンプレックスは持っていません。
一方で「なんで俺がリレーの選手じゃないんだ」などと文句を言う人もいます。この場合は、自分の劣等を認められず、劣等コンプレックスを持っていると考えられます。
劣等コンプレックスには優越感も混在している
コンプレックスの和訳が「複合体」であるように、劣等コンプレックスには、優越感も微妙に入り混じっています。
たとえば試合に出れなかった選手のなかには、「自分だったらミスしなかった」「本気を出せば自分でもできる」などと感じる人がいるかもしれません。
また自殺を図った人が、同じように悩む人を助けたいと思うケースもあります。このときも、死に追い込まれるほどの劣等感と、自分が救ってやるという優越感が共存していると考えられます。
このようなところも、劣等感・劣等コンプレックスの違いです。
劣等コンプレックスを克服するには?
劣等コンプレックスを克服するための方法は、いくつかあります。
まずはシンプルに、何度も練習したり、勉強したりする方法です。苦手なことができるようになれば、自分の劣等性を感じなくて済むようになります。
一方で、自分の劣等性を認める方法もあります。自分が劣等だと認めることができれば、人間としての尊厳は失われないので、心も安定するでしょう。
しかし、自分の劣等性を認めることは大変なことです。なので、その辛さを理解してくれる人や、信頼できる人の存在が重要になります。
劣等コンプレックスの意味・違い・克服方法まとめ
今回は劣等コンプレックスとは何か、意味を簡単にまとめました。
【劣等コンプレックスとは】
自分が他者より劣っていると感じながら、それを認めないこと。すべての人は何らかの劣等感をもち、それを補償しようとして「権力への欲求」が働くとした。
劣等コンプレックスとは、心理学者のアドラーが提唱した考えで、人間がもつ「権力への欲求」を重視しています。
また克服するためには、「自分の劣等性を認められるか」がポイントです。心理学の世界では、劣等感との違いがあるので、意味の解釈には注意しましょう。
劣等コンプレックスを勉強する際には、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
劣等コンプレックスの参考書籍
劣等コンプレックスに関する書籍として、「コンプレックス」や「無意識の構造」などがあります。これは心理学者の河合隼雄による著書です。
どちらも200ページ程度の本で、わかりやすく簡潔にまとめられています。またフロイトとの対立も解説されているので、違いを理解しやすいでしょう。
より詳しく勉強するのであれば、アドラー心理学に関する書籍を選ぶのもおすすめです。
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