コンプレックス(complex)とは、劣等感の意味で使われがちで、日常会話でもよく用いられる言葉です。しかし一般的な使い方と、本当の意味は異なります。
そこで今回は、コンプレックスとは何か、意味を簡単にまとめてみました。人間はなぜコンプレックスを抱いてしまうのか、その原因についても解説しています。
また心理学で見られるコンプレックスの種類や、克服方法もわかりやすく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
コンプレックスとは?意味をわかりやすく解説
そもそもコンプレックスとは、ユングが用いた心理学の専門用語です。愛着・葛藤・憎悪・恐怖などのさまざまな感情が、複雑に絡み合ったものを表します。
そのため日本語では、コンプレックスを「心的複合体」と呼びます。コンプレックスは無意識内に存在するため、統制することは極めて困難です。
【心理学のコンプレックスとは】
さまざまな感情が複雑に絡み合ったもの。無意識内に存在し、心的複合体とも呼ばれる。
また現在は「人よりも強いコンプレックスを抱えている」のような使い方をします。なのでコンプレックスの意味=劣等感だと思っている人も多いでしょう。
しかし心理学の場合、劣等感はあくまでもコンプレックスのひとつにすぎません。コンプレックスの種類については、後ほど簡単に解説します。
ユングが用いたコンプレックスの本当の意味
ユングは何らかの感情によって結合されている心的内容の集まりを、「感情によって色づけられたコンプレックス」と名付けました。これを後に略して、コンプレックスと呼ぶようになります。
たとえば言語連想検査で「打つ」や「棒」などの単語のみ、連想時間が遅れたり、連想できなかったりした例がありました。そこには父親への攻撃性が、被験者の無意識内にあったことをユングは発見します。
もしそのような感情がなければ、連想反応も正常でスムーズだったでしょう。しかし無意識内にある父親への攻撃性が、意識の正常な働きを妨害したというわけです。
この妨害したものこそ、その人が持つコンプレックスになります。
コンプレックスの種類・例を簡単に紹介!
コンプレックスとは、さまざまな感情の複合体なので、その種類も複雑です。
ここではコンプレックスの代表的なものとして、いくつかの種類と例を挙げてみました。
エディプスコンプレックス
フロイトが提唱した概念で、男根期(3〜6歳ごろ)に見られる無意識的な葛藤のことです。
人間の無意識内に、異性の親に対する性愛と同性の親に対する敵対心が存在し、その抑圧に伴ってコンプレックスが形成されるとフロイトは考えます。
しかし、エディプスコンプレックスには批判が多いのも事実です。
男児の場合 | 母親への性愛と同時に、 父親に奪われるのではと思う。 |
女児の場合 | 父親への性愛と同時に 母親に奪われるのではと思う。 |
劣等感コンプレックス
アドラーが提唱した概念で、その名の通り、自分の劣等性に対するコンプレックスを表します。たとえば知能の低さや、社会的地位の低さなどです。
そしてすべての人は、何らかの劣等感をもっており、それを補償しようとして「権力への欲求」が働くとアドラーは考えます。ちなみに劣等感と劣等感コンプレックスは、意味が異なるので注意してください。
メサイアコンプレックス
劣等感と優越感から派生したコンプレックスで、他人を救いたがる傾向が強いところが特徴です。
たとえば自殺未遂をした人が元気になって、「同じように悩んでいる世界中の人を助けたい」などと思う場合があります。
コンプレックスを抱える原因
コンプレックスを抱える原因も、心理学者の考えによってさまざまあります。
たとえばフロイトは、あらゆるコンプレックスの根源的なものとして性欲説を唱えます。しかしフロイトの理論には、批判も多くありました。
一方でアドラーは、「権力への欲求」をコンプレックスの根源として考えます。アドラーの理論はわかりやすく、フロイトに反対する人からも評価されました。
日本においても、フロイトの性欲説と比べて、このコンプレックス=劣等感という考えが受け入れやすいかと思います。
参考:コンプレックスに外傷経験は関係ある?
最初にユングやフロイトは、コンプレックスの中核に何らかの外傷経験が存在すると考えます。たとえば父親に反抗できず、暴力を受けた子供は、服をたたく行為すら嫌になるというイメージです。
外傷経験をもとにした治療は、実際にうまくいった例もありました。しかし治療を続けるにつれて、コンプレックスが複雑な多層構造をもつことに、2人は気づきます。
そのため、単純に「外傷経験がコンプレックスの原因」と決めつけるのは良くないでしょう。コンプレックスを克服するためにも、あらゆる視点で考えることが重要です。
コンプレックスの克服・解消方法
コンプレックスを克服・解消するには、無意識内にあるコンプレックスに気付き、それを受け入れる必要があります。そのためにも、自我が十分に強くならなければなりません。
またコンプレックスと対決する(向き合う)には、大変な努力が必要です。ときには感情の爆発が起こり、それで解消されることもあるでしょう。
そのため自分を理解してくれる、支えてくれる人の存在が、コンプレックスを克服・解消するうえで重要になります。
心理学のコンプレックスの意味・種類・克服方法まとめ
今回はコンプレックスとは何か、意味・種類・克服方法をわかりやすくまとめました。
【心理学のコンプレックスとは】
さまざまな感情が複雑に絡み合ったもの。無意識内に存在し、心的複合体とも呼ばれる。
コンプレックスとは、ユングが用いた心理学の専門用語です。本当の意味では、さまざまな感情の複合体を表します。
またコンプレックスには、種類がたくさんあります。そのため克服・解消するのは簡単なことではないでしょう。
コンプレックスについて理解する際には、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
コンプレックスの参考書籍
コンプレックスに関する書籍として、「コンプレックス」や「無意識の構造」などがあります。これは心理学者の河合隼雄による著書です。
特に「コンプレックス」の本では、コンプレックスの意味や、自我との関係性などもまとめられています。コンプレックスの種類についても、わかりやすく解説されていました。
本の内容も200ページ程度なので、初心者でも読みやすいと思います。
コンプレックスの参考文献
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