応報戦略(しっぺ返し戦略)とは?心理学の意味や具体例をわかりやすく解説

応報戦略(しっぺ返し戦略)とは

応報戦略とは、自分の利益を選ぶか・社会全体の利益を選ぶか、というジレンマが生じたときに役立つ戦略のひとつです。

具体的には「最初の1回目は協力して、それ以降は相手に合わせる」という戦略をとります。そのため、しっぺ返し戦略とも呼ばれています。

コンピュータを用いたジレンマゲームの実験でも、応報戦略は良い成績を収めており、ビジネスなどでは活用例もあるほどです。しかし弱点もあるので、注意が必要でしょう。

そこで今回は、応報戦略とは何かをわかりやすくまとめてみました。心理学の意味・実験内容・具体例についても簡単に説明しています。

また応報戦略の弱点にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。

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応報戦略(しっぺ返し戦略)とは?意味をわかりやすく解説

応報戦略とは、個人の利益・社会全体の利益が対立したジレンマゲームにおける戦略のひとつです。ジレンマゲームについては、囚人のジレンマを参考にすると良いでしょう。

この戦略は「最初の1回目は協力して、2回目以降は相手に合わせる」というものです。オウム返しのように、相手が協力するなら協力、協力しないなら協力しない方を選びます。

【応報戦略(しっぺ返し戦略)とは】
個人の利益・社会全体の利益が対立したジレンマゲームにおける戦略のひとつ。最初の1回目は協力して、2回目以降は相手に合わせるというもの。

国際政治学者のロバート・アクセルロッドが行った、「ジレンマゲームにおける優秀な戦略を調べる」という実験では、応報戦略がほかの戦略よりも良い成績を収めました。

ジレンマゲームにおける応報戦略(しっぺ返し戦略)の実験

アクセルロッドは、ジレンマゲームを繰り返す場合、どのような戦略が良いのかを調査します。この実験をコンピュータ・トーナメントといい、以下のような利得表を使用しました。

【Bさん】
協力
【Bさん】
裏切り
【Aさん】
協力
A:40円
B:40円
A:0円
B:60円
【Aさん】
裏切り
A:60円
B:0円
A:20円
B:20円

まずゲーム用に「毎回裏切る」「協力と裏切りを交互にする」など、あらゆる戦略プログラムを用意します。そしてプログラム同士を対戦させ、優勝を決めるというものです。

その結果、最も良い成績だったのが応報戦略でした。ちなみに2回目のコンピュータ・トーナメントも行われましたが、そこでも応報戦略が優勝しています。

そのため応報戦略は、ジレンマゲームにおける解決策として有名になりました。

応報戦略(しっぺ返し戦略)の具体例を簡単に説明

応報戦略の代表例としてよく挙げられるのは、自社とライバル企業との間で、商品の価格競争をしているケースです。

たとえば相手が商品価格を変えない場合は、自社商品の価格も変更しません。お互いに協力し合う状況が続くことで、市場全体も安定します。

また相手が商品価格を下げた場合は、それにあわせて自社商品の価格も下げます。その結果、価格の安い方にユーザーが流れてしまう事態も防げるというわけです。

もし自社の利益を優先して、お互いに価格を下げ続けると、業界全体が疲弊してしまうでしょう。このような視点で考えると、応報戦略が有効なことがわかると思います。

ただし応報戦略が役立つのは無制限の繰り返しゲームに限る

企業同士の価格競争のように、ジレンマゲームを何度も繰り返すような場面において、応報戦略は役立ちます。しかし回数が決まっている場合、同じ結果にはなりません。

たとえば、以下の利得票をもとにゲームを1回する場合、Aさんの合理的な行動は「裏切り」を選ぶことです。Bさんがどちらを選んでも、協力する以上に利益を得られます。

【Bさん】
協力
【Bさん】
裏切り
【Aさん】
協力
A:40円
B:40円
A:0円
B:60円
【Aさん】
裏切り
A:60円
B:0円
A:20円
B:20円
  • Bさんが「裏切り」を選んだ場合
    →Aさんは協力を選ぶと0円、裏切りを選ぶと20円
  • Bさんが「協力」を選んだ場合
    →Aさんは協力を選ぶと40円、裏切りを選ぶと60円

これは、ゲーム回数が増えても同じことがいえます。つまり回数が決まっているジレンマゲームにおいて、Aさんはずっと「裏切り」を選択するというわけです。

そのため応報戦略は、あくまでも無制限の繰り返しゲームにおいて有効だといわれています。

※アクセルロッドの実験は、ゲーム回数が200回と決まっている状況で実施されたため、「応報戦略が優秀だと証明できない」という批判もあります。

応報戦略(しっぺ返し戦略)の弱点はある?

無制限の繰り返しゲームにおいては成績の良い応報戦略ですが、実は弱点もあります。それは誤作動でミスしてしまうと、協力状態に戻せないということです。

たとえば両者が応報戦略をとるとき、相手に裏切られるまではお互いに協力します。しかし間違えて裏切ってしまうと、その後はずっと裏切り続けることになります。

この場合、ゲームの成績も悪くなるので注意が必要です。お互いに協力するときよりも、報酬の少ない状態が続いてしまいます。

1回目2回目3回目それ以降
Aさん×××
Bさん×××

このような応報戦略の弱点は、日常例に置き換えても同じことがいえます。

相手と敵対関係であれば、自分が勝ち続ける状態でも問題ありません。しかし相手と協力関係にあるとき、一度のミスで修復できなくなるのは困ってしまうでしょう。

実際に応報戦略は、ほかのトーナメントで負ける場合もあります。それぞれの戦略には長所と短所があるので、応報戦略が絶対に良いとは言い切れないことを覚えておいてください。

応報戦略(しっぺ返し戦略)の意味・具体例・実験内容まとめ

今回は心理学の応報戦略について、わかりやすくまとめました。

応報戦略の意味は、以下のとおりです。相手が協力するならそのまま協力して、相手が裏切るならこちらも裏切る選択をします。

【応報戦略(しっぺ返し戦略)とは】
個人の利益・社会全体の利益が対立したジレンマゲームにおける戦略のひとつ。最初の1回目は協力して、2回目以降は相手に合わせるというもの。

特に価格競争のような無制限の繰り返しゲームにおいて、応報戦略は良い成績を収めます。ただし弱点もあり、どんな場面でも有利になるわけではないので注意が必要です。

応報戦略の理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。

応報戦略に関係する参考文献

アクセルロッド理論再考

社会的ジレンマ解決の意図せざる結果

繰り返し囚人のジレンマにおける Extortion 戦略の有効性

※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。

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