ACTとは「自分でコントロールできないものを受け入れ、豊かな人生を切り開くために自己決定し、行動すること」を表します。しかし意味を混同しやすく、注意が必要です。
そこで今回は、心理学のACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をわかりやすくまとめました!意味・特徴・やり方なども、簡単に紹介しています。
またACTの6つの特徴や、マインドフルネス・認知行動療法との違いにも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは?
そもそもACT(読み方:アクト)とは、心理学者のスティーブン・C・ヘイズらが提唱した概念です。関係フレーム理論に基づいており、認知行動療法に続く、新しい心理療法だと言われています。
英語の「acceptance and commitment therapy(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」の略で、それぞれの頭文字をとって、ACTと名付けられました。
【ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは】
心理的柔軟性を高めること(自分でコントロールできないものを受け入れ、豊かな人生を切り開くために自己決定し、行動すること)を目的にした心理療法。
ACTの目的は、心理的柔軟性を高めることです。これは「自分でコントロールできないものを受け入れ、豊かな人生を切り開くために自己決定し、行動する」ことを意味します。
そのため従来の行動療法とは違い、自分の価値に沿った生き方や、マインドフルネスを重視しているのが特徴です。
acceptance | 自分でコントロールできないものを受け入れる |
commitment | 豊かな人生を切り開くために行動(自己決定)していく |
※commitmentには「専念する」などの意味があります。
心理学におけるACTの特徴をわかりやすく解説
ACTには、コアとなる6つのプロセスがあります。具体的には、「今、この瞬間」との接触・脱フュージョン・アクセプタンス・文脈としての自己・価値・コミットされた行為です。
これらは、「ACTのヘキサフレックス」として知られています。ここではそれぞれの特徴を、簡単に解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
※ヘキサフレックス:六角形と柔軟性を組み合わせた造語
「今、この瞬間」 との接触 | ・過去や未来ではなく 今に意識を向ける。 ・無意識的な思考や 行動にも注意を払う。 |
脱フュージョン | ・自分の思考に囚われ 振り回されない。 ・一歩離れて自分を 客観視してみる。 |
アクセプタンス | ・痛みや苦しみを ありのままにする。 ・受け入れられる スペースをつくる。 |
文脈としての自己 観察する自己 | ・純粋なる気づき。 ・自分が気づいている ということに気づく。 |
価値 | ・人生を有意義で 豊かにするもの。 ・大切にしたいこと どう生きたいかなど。 |
コミットされた 行為 | ・価値に沿って 行動をすること。 |
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)のやり方
ACTを実践する際には、先ほどの6つの特徴をもとに、心理的柔軟性のない項目を理解してから進めます。それによって、セラピーの内容も大きく異なります。
そのためACTのやり方として、まずは心理的柔軟性をチェックしてみると良いでしょう。項目ごとに簡単な質問をまとめているので、一度考えてみてください。
ちなみに患者に対してACTを実践する場合、ラポール(信頼関係)の構築がとても重要です。ほかにも経歴を聞いたり、目標となるゴールを決めたりする必要があります。
「今、この瞬間」 との接触 | 過去を悩む時間 未来を心配する時間は どれくらいあるか。 |
脱フュージョン | 固定概念や厳しい規則に 縛られていないか。 |
アクセプタンス | 受け入れられないことを どう回避しているか。 生活に影響が出ているか。 |
文脈としての自己 観察する自己 | 自分に対してどのように 捉えているのか。 性格・身体的特徴など どこから定義づけているか。 |
価値 | 自分の価値とは何か。 自分の価値に沿っていない 行動を取っているか。 |
コミットされた 行為 | やめた方がいい行動 機能しない行動をするか。 または続けているか。 |
ACTに向いている人・向いていない人とは?
ACTはうつ病・恐怖症・不安障害など、さまざまな症状に用いられています。また職場のストレス・禁煙など、日常生活にも応用されています。
そのため、「すべての人がACTに向いている」と言っても過言ではありません。ACTの意味を理解し、実際に行動することで、より豊かで有意義な人生を送れるでしょう。
ただし自閉症や脳の障害などが原因で、言語使用能力に問題があると、ACTの効果を実感しにくい可能性があります。その場合はやり方などを、一度専門家に相談するのがおすすめです。
参考:マインドフルネスとACTの意味の違い
マインドフルネスとは、柔軟かつオープンに、好奇心を持って注意を向けることです。そのため、ACTと意味が似ている部分もあります。
しかしACTでは、価値に沿った生き方をするための行動も必要です。つまりマインドフルネスは、あくまでもACTの一部に過ぎません。
心理学において、ACTとマインドフルネスでは、このような違いがあります。
参考:認知行動療法とACTの意味の違い
認知行動療法は、ある特定の状況に対して、私たちの感情や行動がどう捉えるかに着目しています。そして歪んだ認知を自分で理解し、変容させることで、ストレスを軽減することが目的です。
【電車でお年寄りが立っている】
「年寄り扱いするな」と怒鳴られるかもしれない。
→怒鳴られる可能性はほとんどないと思う。
→「ありがとう」と感謝されることもあるよね。
それに対してACTとは、認知を変容させるのではなく、そのまま受け入れます(アクセプタンス)。そのうえで、自分の価値に沿った行動をしていきます。
【電車でお年寄りが立っている】
私は席を譲りたいと思うけど、不安も感じている。
→自分の価値は「人に優しくすること」である。
→自分の価値に沿った行動をしよう。
このように、ACTと認知行動療法では意味が違うので、覚えておくと良いでしょう。
参照:e-ヘルスネット「認知行動療法」
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の意味まとめ
今回は心理学のACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)について、わかりやすくまとめてみました。
ACTの意味は、以下のとおりです。従来の行動療法とは違い、自分の価値に沿った生き方や、マインドフルネスを重視しています。
【ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは】
心理的柔軟性を高めること(自分でコントロールできないものを受け入れ、豊かな人生を切り開くために自己決定し、行動すること)を目的にした心理療法。
またACTは、さまざまな症状だけでなく、日常生活にも応用できます。やり方は人それぞれなので、まずは心理的柔軟性をチェックしてみるのが良いでしょう。
心理学のACTについて、理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
ACTの参考書籍
ACTに関する書籍として、「よくわかるACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」などがあります。
これは、ACTのトレーナーとしても評価されているラス・ハリスが著者の本です。意味や特徴だけでなく、具体的なやり方もわかりやすくまとめられています。
そのため、ACTの入門書としてはぴったりでしょう。気になる人は、ぜひ一度チェックしてみてください。
ACTの参考文献
・アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)のトリートメント評価の実際:サイコセラピーがさらに「社会を動かす」ために何が必要か
・ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)を用いたポピュレーションアプローチの可能性
・閉じこもり高齢者に対するアクセプタンス & コミットメント・セラピー(ACT)の効果とプロセスに関する予備的研究
※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。
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