マシュマロ・テストとは、子どもの自制心を調査した実験のことです。マシュマロを我慢できるかによって「その後の人生で成功するか」を推測できますが、注意点もあります。
そこで今回は、心理学のマシュマロ・テストをわかりやすくまとめてみました。具体的なやり方や、マシュマロを我慢できる子・できない子の違いについても紹介しています。
また研究が間違いという意見や、嘘という批判にも触れています。マシュマロ実験の真実を解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
心理学のマシュマロ・テスト(マシュマロ実験)とは?
そもそもマシュマロ・テスト(マシュマロ実験)とは、心理学者のウォルター・ミシェルが実施した研究のひとつです。マシュマロを用いて、子どもの自制心を調査しています。
マシュマロ・テストでは、子どもが「すぐにマシュマロを1個もらうか」「少し我慢してマシュマロを2個もらうか」を選べる環境を用意します。そして、その様子を観察しました。
【マシュマロ・テスト(マシュマロ実験)とは】
マシュマロを使って、子どもの自制心を調査した実験。「自制心があることと、その後の人生で成功することに関連がある」という内容で、ウォルター・ミシェルが行なった。
ミシェルはその後、マシュマロ実験に参加した子どもたちの成長を追跡します。するとマシュマロを我慢できた子どもの方が、学校の成績も良く、心身も健康なことに気づきます。
つまりマシュマロ・テストで自制心があることと、その子が「人生で成功するか」について、関連があるということです。またミシェルは、自制心を訓練できるとし、その方法にも注目しています。
マシュマロ・テストで自制心を測定するやり方
マシュマロ・テストでは、まず子どもと研究者を部屋に入れます。子どもはテーブルについた状態で、テーブルの上にはマシュマロが1つ用意されています。
そして研究者は、「今すぐ食べてもいいけど、私が戻ってくるまでマシュマロを我慢できたらもう1つあげる」と子どもに説明します。その後、研究者は退出して、子どもを一人にしました。
研究者が部屋に戻ってくるまでの時間は、約15〜20分です。その間に子どもがマシュマロを食べてしまうのか、それとも我慢できるのか、その行動を観察しました。
ちなみにマシュマロの代わりに、クッキーやプレッツェルなどが使われた実験もあります。それらも含めて、マシュマロ・テスト(マシュマロ実験)と呼ばれています。
マシュマロ・テストの実験結果とその後
マシュマロ・テストでは、我慢できる子・できない子の両方がいました。実験はそこで終わりましたが、ミシェルは参加した子どもたちの成長を追跡します。
するとマシュマロを我慢できた子どもは、我慢できなかった子どもと比較して、以下のような特徴がありました。
- 成績が良い
- 適応性がある
- 肥満指数が低い
- 立ち直りが早い
- 誘惑に負けにくい
- 自信を持っている
- ストレス耐性がある
- 理性をコントロールできる
- 集中できて気が散りにくい
- 危険な薬物に手を出しにくい
つまり学校の成績や、心身の健康面で、マシュマロを我慢できた子どもの方が優れていたのです。
この実験結果から、人生を成功させるために自制心が重要であり、マシュマロ・テストとも関連があることをミシェルは主張しました。
マシュマロ実験で我慢できる子・できない子の違い
マシュマロ・テストの実験結果については、脳科学の視点からも研究されています。それによると、我慢できる子・できない子で、脳の活性する領域が違うとわかりました。
まずマシュマロ実験で我慢できない子を調べると、腹側線条体の活動が盛んでした。この領域は、欲求・快楽・中毒と結びついています。
一方でマシュマロ実験で我慢できる子は、前頭前皮質領域の活動が盛んでした。この領域は、問題解決能力や行動のコントロールに関わっています。
つまりマシュマロを見たときの考え方・捉え方が、自制心に大きく関わっているということです。
ただし自制心は強化できる(if then プランニング)
ミシェルは自制心について、生まれつきではなく、強化できるものだとしています。そこで用いられたのが、「if then(イフゼン)プランニング」です。
イフゼンプランニングでは、「if(もし〜なら)」「then(そのときは〜)」という考え方をします。これにより、誘惑に対処する方法をリハーサルしておきます。
たとえば「もしマシュマロを食べたくなったら、そのときは目を閉じて見ないようにする」というイメージです。実際に、イフゼンプランニングの成果も出ています。
この考え方は、日常生活のあらゆる場面で応用ができます。気になる人は、一度試してみると良いでしょう。
実は嘘だった?マシュマロ実験の真実とは
マシュマロ・テストについては、嘘・間違いという批判も多く出てきます。それは自制心よりも、「家庭環境や経済的背景に左右される」という考えが主流になったためです。
たとえば、貧しくて生活が苦しい子どもを想像してみてください。「あとで本当にもらえる」という保証がなければ、目の前にある少ない報酬を受け取ろうとするでしょう。
実際に2018年には、マシュマロ・テストの再現実験が行われており、そこでも家庭環境や経済的背景の重要性が主張されています。
マシュマロ・テストは有名な実験のひとつですが、このような批判があることも事実です。そのため、あくまでも参考程度にすることをおすすめします。
マシュマロ・テストのやり方と実験の真実まとめ
今回はマシュマロ・テスト(マシュマロ実験)について、わかりやすくまとめました。
マシュマロ・テストとは以下のとおりです。マシュマロを我慢できる方が、学校の成績も良く健康的だという結果になり、自制心が重要であることをミシェルは主張しました。
【マシュマロ・テスト(マシュマロ実験)とは】
マシュマロを使って、子どもの自制心を調査した実験。「自制心があることと、その後の人生で成功することに関連がある」という内容で、ウォルター・ミシェルが行なった。
またミシェルは、自制心が強化できるものだとしています。しかし近年では、家庭環境や経済的背景の方が重要だと言われているので、嘘や間違いという批判も多いようです。
マシュマロ・テストについて、理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にして見てください。
マシュマロ・テストの参考書籍
マシュマロ実験に関連する書籍として、「マシュマロ・テスト 成功する子・しない子」があります。
これはウォルター・ミシェルが著者の本で、マシュマロ・テストのやり方が具体的に紹介されています。またイフゼンプランニングについても、簡単に解説されていました。
約350ページほどですが、内容自体は難しくないので読みやすいでしょう。気になる人は、一度チェックしてみることをおすすめします。
マシュマロ・テストの参考文献
・子どもの満足遅延を習慣が支える ―マシュマロとプレゼント、長く「待てる」のはどっち?―
・動機づけと報酬期待の脳内情報処理 ─腹側線条体と前部帯状皮質のニューロン活動─
・「セルフコントロールが得意」とはどういうことなのか 「葛藤解決が得意」と「目標達成が得意」に分けた概念整理
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