箱庭療法とは?解釈で何がわかる?効果・事例・やり方をわかりやすく解説

箱庭療法とは・解釈でわかること

箱庭療法とは、砂の入った箱のなかに玩具(おもちゃ)を並べる心理療法です。日本では河合隼雄が広めたのをきっかけに、数々の現場で実施されるようになりました。

そこで今回は、箱庭療法で何がわかるのか、解釈の方法・やり方についてまとめてみました。また箱庭療法の効果や、メリットについても紹介しています。

箱庭療法について知りたい人は、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。

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心理学における箱庭療法とは?

そもそも箱庭療法とは、イギリスのローエンフェルト(Lowenfeld,M.)による「世界技法(World Technique)」がもとになっています。

そして彼女に教えを受けたカルフ(Kalff,D.)が、ユング心理学の教えを導入して、砂遊びによる治療法として発展させたものが箱庭療法です。

【箱庭療法とは】
砂の入った箱に、適当な玩具を選ばせて、何らかの表現をさせる心理療法。ローエンフェルトやカルフによって考案されたものであり、日本でも河合隼雄が紹介して広まった。

日本では1965年から、河合隼雄が箱庭療法を紹介しています。それ以降、効果的な治療法として広まりました。

箱庭療法のやり方をわかりやすく解説

箱庭療法を実践するためには、砂箱と玩具が必要になります。

使用する砂箱は、57×72×7(cm)の大きさです。内側は青く塗られており、砂を掘ったときに「水」を表現できるようになっています。

玩具の指定はありませんが、できるだけ多くの種類を用意します。たとえば同じ「人」でも、兵隊・警察官・インディアンなど、さまざまあると良いでしょう。

基本的に「これらのおもちゃを使って、ここに何か作って下さい」と伝えれば、クライエントに伝わります。箱庭療法にかかる時間は、平均30分ほどです。

玩具の種類玩具の例
男女・老人・子供・自転車に乗る人・
兵隊・警察官・インディアンなど
動物犬・猫・家畜・鳥・魚、蛇・蛙など
乗り物自動車・汽車・飛行機・船・戦車など
その他木・花・柵・怪獣・建物・家・神社・
石・天使・ガソリンスタンドなど

効果やメリットは?箱庭療法の特徴について

心理療法のなかでも箱庭療法は、「遊戯療法」と「絵画療法」の中間にあるといえます。

ここではそんな箱庭療法の効果・メリットについてまとめてみました。

1、子どもから大人まで実践できる

箱庭療法は「砂箱の上に玩具を並べる」ということができれば、誰でも実施できます。そのため対象年齢は、3歳ぐらいから大人までと幅広いのが特徴です。

特に児童・生徒には向いていると考えられます。たとえ高校生であっても、玩具を並べることについて抵抗はほとんどありません。

2、非言語で表現できる

箱庭療法では、現具を置いたり砂で造形したりするだけで完成します。そのため、会話が成り立たないようなケースでも活用できるでしょう。

クライエントが緘黙(かんもく)や、寡黙の場合には特に有効です。

※緘黙:まったく喋らない全緘黙と、学校や職場など特定の状況で話せなくなる選択性緘黙がある
※寡黙:言葉数が少ないこと

3、クライエントが退行的になる

「砂に触れる」という行為は、治療において必要な、適度の退行を促すと言われています。これにより、クライエントの防衛的な固さがほぐれやすくなります。

そのため箱庭療法の場合、クライエントの表現に自由度が増し、直接話を聞くときとは違った気づきを得られるでしょう。

また絵画療法などで「私は絵が苦手だから」と躊躇するような場合でも、箱庭療法なら実践できるケースがあります。

4、箱庭の解釈を必要としない

基本的に箱庭療法において、作品に対するカウンセラーの解釈を、クライエントに伝えることはしません。あくまでもカウンセラーは、見守ることを前提としています。

するとクライエントは、カウンセラーにわかってもらえるという実感を得ることができ、自己の表現(象徴)が生じます。このような「保護された場面での象徴体験」によって、治療が進むというわけです。

つまり箱庭療法では、カウンセラーの解釈を伝えて治療するのではなく、患者の自己治癒を力を利用しているといえます。

箱庭療法の解釈で何がわかる?

先ほど箱庭療法の特徴で、「解釈を伝える必要はない」と紹介しました。しかしカウンセラーは、治療過程に沿った全体の流れから、箱庭に表現された意味を考えなければなりません。

箱庭を解釈しようとすると、クライエントの変化に気づきます。たとえばユング派のノイマン(Neumann, E.)は、自己表現のあと、箱庭の表現に以下のような段階があると説明しています。

簡単にまとめると、動物・植物を使った表現が見られ、次に何か対立・闘争のような表現が見られるということです。さらに治療が進むと、自我がその環境に適応してくる様子が見られます。

段階1動物的・植物的段階
(die animalische vegetative Stufe)
段階2闘争の段階
(die Kampfphase)
段階3集団への適応の段階
(die Anpassung an das Kollektiv)

参照:箱庭療法

他にも「どんな玩具が使用されているか」などは注目すべきポイントです。たとえば箱庭に表現される水は「生命・母性」、蛇は「変化の兆し」などを表していると解釈できます。

このとき一方的な解釈をしたり、作品を批判したりしないようにしましょう。箱庭療法では、あくまでもクライエントに自由で守られている環境を提供することが重要です。

「何も置かない」というケースもある

箱庭をクライエントにやらせても、何も置かない(置けない)ことがあります。このようなとき、ただ興味がないだけの場合や、表現できない場合などが考えられます。

箱庭に興味がない場合は、無理にやらせる必要もないでしょう。箱庭療法は、カウンセリングのたびに実施できなくても問題ないので、クライエントが意識を向けたら声をかけてあげてください。

一方で箱庭に表現できない場合、治療の難しさが表れているようにも解釈できます。ただし次回以降になって変わる可能性もあるので、何事も決めつけないことが重要です。

ちなみに箱庭で砂遊びをしたり、砂に絵を描いたりするだけで、治療が進むケースもあります。

箱庭療法にはどんな事例がある?

箱庭療法の事例としては、不登校の生徒に対するもの、攻撃性の強い児童に対するものなどさまざまです。

たとえば不登校の生徒の作品では、箱庭の隅っこに玩具が集中していたり、一部が柵で囲われていたりします。そして治療を進めるごとに、箱庭全体で表現される様子が見られました。

また攻撃性の強い生徒の作品では、まとまりなく玩具が置かれる様子も見られます。こちらも治療を進めるごとに、意味のある置き方になったり、全体のテーマが表現されるようになったりしました。

より詳しく箱庭療法の事例を知りたい人は、この後に紹介する参考書籍をチェックしてみてください。

箱庭療法の意味・解釈・やり方・効果まとめ

ここでは心理学の箱庭療法とは何か、意味をわかりやすくまとめてみました。

箱庭療法の説明は以下のとおりです。日本では河合隼雄が広めたのをきっかけに、多くの現場で実施されるようになります。

【箱庭療法とは】
砂の入った箱に、適当な玩具を選ばせて、何らかの表現をさせる心理療法。ローエンフェルトやカルフによって考案されたものであり、日本でも河合隼雄が紹介して広まった。

箱庭療法は子どもから大人まで対応可能で、非言語で表現できるなどのメリットがあります。また具体的な事例から、どのように解釈されているかを調べると、より深く理解できるでしょう。

箱庭療法について勉強する際には、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。

箱庭療法の参考書籍

箱庭療法入門

箱庭療法に関する書籍として、「箱庭療法入門」などがあります。著者は河合隼雄です。

この本では箱庭療法の歴史や、具体的な事例・解釈がまとめられています。箱庭の作品も確認できるので、初心者にもおすすめです。

箱庭療法の参考文献・組織

※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。

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