集団極性化(集団極化現象)とは?心理学の意味や身近な例をわかりやすく解説

集団極性化(集団極化現象)とは

集団極性化(集団極化現象)とは、「個人で判断するよりも、集団で話し合う方が、極端な意思決定になりやすい」ことを意味する心理学用語です。

ハイリスクな選択をすることもあり、1961年のキューバ侵攻は、集団極性化の事例のひとつとしても知られています。身近な例も多いので、原因を確認しておくと良いでしょう。

そこで今回は、集団極性化とは何かをわかりやすくまとめてみました。心理学の意味・実験内容・具体例についても簡単に説明しています。

また集団極性化の対策方法にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。

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集団極性化とは?心理学の意味をわかりやすく解説

そもそも集団極性化は、社会心理学の用語で、集団極化現象とも呼ばれています。

これは「個人で判断するよりも、集団で話し合う方が、極端な意思決定になりやすい」という意味です。集団内のメンバー構成や、各々が持つ意見によって、偏る方向は異なります。

【集団極性化(集団極化現象)とは】
個人で判断するよりも、集団で話し合う方が、極端な意思決定になりやすい現象のこと。リスクのある方向に偏るリスキーリフトと、慎重な方向に偏るコーシャスシフトがある。

たとえば会議において、自分は「A案が良さそう」と思っている場面を想定します。そして話し合いをした結果、「A案以外にあり得ない」となってしまうイメージです。

ちなみに集団の意見が偏って、不合理な決定や誤った判断をしてしまうことを「集団思考(集団浅慮)」といいます。

「リスキーシフト」と「コーシャスシフト」について

集団極性化には、「リスキーリフト」と「コーシャスシフト」があります。

集団で話し合うことで、リスクのある選択をしやすくなる現象がリスキーシフトです。「赤信号みんなで渡れば怖くない」という表現が、的確でわかりやすいでしょう。

一方で、集団内に安全志向のメンバーが多いと、保守的な選択をしやすくなることもわかっています。この現象をコーシャスシフトをいいます。

集団極性化の実験においては、リスキーシフトの研究例が多くありますが、コーシャスシフトもあわせて覚えておくようにしてください。

集団極性化に関係する心理学実験

集団極性化に関係する実験として、心理学者のストーナーが実施した研究があります。リスクのある選択に対して、「成功率が何%であれば挑戦するか」を回答してもらうという内容です。

具体的には「病気を治すために危険な手術を受ける」「高収入を目指すために安定した職場を辞める」のような質問が、全部で12問用意されています。

個別の場合、参加者が挑戦できると回答した成功率は、平均値で男性55.8%、女性54.7%でした。つまり半分以上の成功率があれば、ハイリスクな選択をするというわけです。

しかし6人グループの場合、平均値は男性47.9%、女性46.8%まで下がりました。これはリスキーシフトが起こり、半分以下の成功率でも挑戦する方向に偏ったことを表しています。

集団極性化の身近な例を簡単に紹介

集団極性化の身近な例としてわかりやすいのが、インターネットのいじめ問題です。

たとえばSNSの誹謗中傷に、ほかの人もコメントすると、内容は徐々にエスカレートしていきます。それが原因で、有名人が体調を崩したり、活動を辞めたりする例も多いでしょう。

またネットの掲示板でも、議論が極端な方向に暴走することがあります。このように、インターネット上で集団極性化が起こることを「サイバーカスケード」といいます。

ほかにもワンマン社長が経営する企業や、リーダー的存在がいる学校などでも集団極化現象が見られるので、原因や対策方法を確認しておくことが大切です。

集団極性化の原因と対策方法とは?

集団極性化が生じる原因について、社会的比較などがあります。これは、他者の意見が自分と同じだとわかることで自信を持ち、その考えが強化されるというものです。

ほかにも情報的影響や、説得的議論が関係しているという説もあります。内容はそれぞれ異なりますが、周りの意見を聞いて多数派に合わせようとするのは共通だといえるでしょう。

社会的比較他者の意見が自分と同じだとわかることで自信を持てるようになる
情報的影響自分が正しく行動するため、他者の意見を判断基準にしようとする
説得的議論話し合いで、自分の意見を支持するような内容に注目しやすくなる

これらを踏まえて集団極性化を防ぐには、リーダーの役割が重要になってきます。具体的には、影響力が強くならないようにリーダーが最後に述べる・反対意見を求めるなどです。

また話し合いをするグループを小さくしたり、外部の専門家を呼んだりすることも有効だといえます。集団極性化の対策を考える際には、参考にしてみてください。

集団極性化の意味・身近な例・実験内容まとめ

今回は心理学の集団極性化について、わかりやすくまとめてみました。

集団極性化の意味は、以下のとおりです。社会心理学の用語で、リスキーシフトやコーシャスシフトとあわせて覚えておくと良いでしょう。

【集団極性化(集団極化現象)とは】
個人で判断するよりも、集団で話し合う方が、極端な意思決定になりやすい現象のこと。リスクのある方向に偏るリスキーリフトと、慎重な方向に偏るコーシャスシフトがある。

インターネットのいじめ問題・SNSの誹謗中傷など、集団極性化の身近な例は多くあります。極端な判断をしないためにも、原因や対策方法をチェックしておくのがおすすめです。

集団極性化の理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。

集団極性化に関係する参考文献

集団極化現象における社会的比較の役割

集団極化現象における社会的比較の役割(2)

リスキーシフトと政策決定-キューバ危機を事例として-

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