リスキーシフトとは?心理学の意味・具体例・実験内容をわかりやすく解説

リスキーシフトとは

リスキーシフトとは、「個人で判断するよりも、集団で話し合う方が、リスクのある選択をしやすい」という現象を意味する心理学用語です。

たとえば1961年に起こったキューバ侵攻は、リスキーシフトの事例としてよく紹介されています。日常生活で見られる例も多いので、原因を確認しておくと良いでしょう。

そこで今回は、リスキーシフトとは何かをわかりやすくまとめてみました。心理学の意味・実験内容・具体例についても簡単に説明しています。

またリスキーシフトの解決策にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。

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リスキーシフトとは?心理学の意味をわかりやすく解説

そもそもリスキーシフトとは、集団極性化(集団極化現象)のひとつで、アメリカの社会心理学者であるジェームズ・ストーナーが提唱しました。

これは「個人で判断するよりも、集団で話し合う方が、危険な選択をしやすい」という現象を表します。その名のとおり、リスキーな方向に意見がシフトするという意味です。

【リスキーシフトとは】
個人で判断するよりも、集団で話し合う方が、リスクのある選択をしやすい現象のこと。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」という表現が、的確でわかりやすいと思います。リスキーシフトが起こる原因については、以下のような点から説明されています。

責任の分散仮に失敗したとしても、個人それぞれが感じる責任は少ない
リーダーシップリスク志向の人は自信があり、メンバーに影響を与えやすい
不確実性の低減話し合いが進むほど情報が集まるので、不確実性がなくなる
価値一般的に、リスクを恐れずに行動することは評価されやすい
『新版 心理学』をもとに作成

リスキーシフトの心理学実験を簡単に説明

リスキーシフトの実験のために、ストーナーは「病気を治すために危険な手術を受ける」「高収入を目指すために安定した職場を辞める」のような質問を、全部で12問用意します。

そしてこのようなリスクのある選択に対して、「成功率が何%であれば挑戦するか」を参加者に回答してもらうという内容です。個別の場合と、6人グループの場合で実施しました。

個別の場合、参加者が挑戦できると回答した成功率は、平均値で男性55.8%、女性54.7%でした。つまり半分以上の成功率があれば、ハイリスクな選択をするというわけです。

しかし6人グループの場合、平均値は男性47.9%、女性46.8%まで下がりました。これはリスキーシフトが起こり、半分以下の成功率でも挑戦する方向に偏ったと考えられます。

日常生活で見られるリスキーシフトの具体例

リスキーシフトの具体例は、日常生活でも見られます。たとえば旅行を楽しんでいる観光客のグループが、ハメを外してしまうようなケースです。

撮影禁止・立入禁止などの警告があっても、みんなで「少しくらい大丈夫」と思ってしまうのは、リスキーシフトが関係していると考えられます。

また企業においても同じで、特にワンマン社長が経営するような会社では、極端な判断になりやすいといえます。その結果、事業に失敗して経営が傾いてしまうイメージです。

ほかにもリスキーシフトは、ネット上のいじめ問題にも関係しています。誹謗中傷の投稿に対して、ほかの人も便乗して、内容がエスカレートしている例をよく見るでしょう。

リスキーシフトが起こると、一人ではやらないことでもやってしまう可能性があります。集団内の話し合いで冷静に判断するためにも、解決策を確認しておくことは大切です。

回避するには?リスキーシフトの解決策

リスキーシフトを回避する解決策は、いくつか考えられます。

たとえばリーダー的存在の人が、メンバーから意見や質問を求める方法です。リーダーの発言は強い影響力を持つため、何かを述べるときは一番最後にするのが良いでしょう。

また人数を減らして、討論するグループを小さくする方法もおすすめです。個人の責任が大きくなるだけでなく、周りからの圧力を感じて同調してしまうような事態も防げます。

ほかにも外部の専門家を呼んだり、反対する役割の人を決めたりするのも有効だといえます。リスキーシフトの解決法を考える際には、参考にしてみてください。

リスキーシフトとは反対の「コーシャスシフト」

リスキーシフトとは、集団で話し合うことでリスクのある判断をしやすくなる現象です。一方で、リスクを回避しようと保守的な選択をする「コーシャスシフト」もあります。

たとえば新しい企画を話し合うときに、「予算はかかるけど挑戦しよう」となるのがリスキーシフトで、「予算がかかるからやめよう」となるのがコーシャスシフトです。

集団内のメンバーに安全志向の人が多い場合は、コーシャスシフトが起こるといわれています。リスキーシフトと一緒に紹介されやすいので、あわせて覚えておくと良いでしょう。

リスキーシフトの意味・具体例・実験内容まとめ

今回は心理学のリスキーシフトについて、わかりやすくまとめてみました。

リスキーシフトの意味は、以下のとおりです。集団極化現象のひとつで、特に1961年のキューバ侵攻は、代表的な事例として知られています。

【リスキーシフトとは】
個人で判断するよりも、集団で話し合う方が、リスクのある選択をしやすい現象のこと。

またいじめ問題をはじめ、日常においてもリスキーシフトの具体例はよく見られます。勉強する際には、反対の意味を持つコーシャスシフトとあわせて覚えておくと良いでしょう。

リスキーシフトの理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。

リスキーシフトに関係する参考文献

集団極化現象における社会的比較の役割

集団極化現象における社会的比較の役割(2)

リスキーシフトと政策決定-キューバ危機を事例として-

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