ストレンジ・シチュエーション法とは、乳幼児の愛着(アタッチメント)を測定する手続きのことです。4つのタイプに分けることができ、それぞれ反応が異なります。
そこで今回は、ストレンジ・シチュエーション法をわかりやすくまとめてみました。タイプごとの特徴や、覚え方についても簡単に紹介しています。
またエインズワースが行った、ストレンジ・シチュエーション法の実験例も、具体的に解説しています。発達心理学を理解するうえでは重要なので、ぜひ参考にしてみてください。
ストレンジ・シチュエーション法とは?わかりやすく解説
そもそもストレンジ・シチュエーション法とは、心理学者のメアリー・エインズワースが開発したものです。乳幼児の愛着(アタッチメント)を測定する目的で使用されます。
ストレンジ・シチュエーション法では、乳幼児がいる部屋で、母親・見知らぬ人が出入りします。そのような状況下で、乳幼児の反応を調べました。
【ストレンジ・シチュエーション法(SSP)とは】
エインズワースが開発した「乳幼児の愛着行動を測定する手続き」のこと。回避型、安定型、アンビバレント型、無秩序・無方向型の4タイプに分類できる。
乳幼児を観察した結果、愛着行動のパターンがそれぞれ違うことを、エインズワースは発見します。そして養育者と離れたとき、再開したときの反応を、タイプごとに分類しました。
ちなみにストレンジ・シチュエーション法は、「新奇場面法」や「SSP(Strange Situation Procedure)」とも呼ばれています。
ストレンジ・シチュエーション法の4つのタイプ
見知らぬ人と一緒にいる環境や、母親のいない環境だと、乳幼児は強いストレスを感じます。そのため愛着行動が活性化し、その反応を観察しやすくなります。
エインズワースは、ストレンジ・シチュエーション法を用いて、乳幼児の反応をタイプごとに分類しました。ここでは、それぞれの特徴を簡単に解説していきます。
Aタイプ 回避型 | 養育者と離れても混乱しない また再開しても無関心で よそよそしい態度をする |
Bタイプ 安定型 | 養育者と離れると混乱する 養育者と再会すれば安定する |
Cタイプ アンビバレント型 | 養育者と離れると激しく混乱する 養育者と再会したときは、 怒りを表す・不安定になる |
Dタイプ 無秩序・無方向型 | 行動の一貫性に欠ける |
ちなみに最初、エインズワースは、子どもをAタイプ・Bタイプ・Cタイプに分類していました。その結果、Aタイプが21%・Bタイプが67%・Cタイプが12%だったそうです。
しかしすべての子どもを、3つのタイプに当てはめるのは難しいという見方が出てきました。そして心理学者のメインとソロモンが、新たにDタイプを加えて提唱しています。
そのため現在、ストレンジ・シチュエーション法は、4つのタイプに分類されるものとして認知されています。
Aタイプ:回避型
Aタイプ(回避型)の子どもは、母親と離れても、あまり混乱・困惑する様子を見せません。また母親と再開しても、喜んで迎え入れるわけではなく、無関心でよそよそしくしています。
Aタイプの子どもの母親は、子どもからの働きかけに対して、あまり微笑んだり抱きしめたりしないのが特徴です。また子どもが苦痛を示しても,嫌がって遠ざけてしまうことがあります。
Bタイプ:安定型
Bタイプ(安定型)の子どもは、母親と離れると、泣いたり混乱したりします。しかし母親が戻れば、笑顔を見せて、気持ちを落ち着かせるでしょう。
また近づいたり抱きつたりと、身体的な接触を求めてくるのが特徴です。そして養育者を安全基地にして、積極的に周囲を探索したりする様子も観察できます。
Bタイプの子どもの母親は、子どもの欲求に敏感で、過剰な働きかけ・無理な働きかけをしません。また子どもとの遊びや、身体的接触を楽しんでいる様子が見られます。
Cタイプ:アンビバレント型
Cタイプ(アンビバレント型)の子どもは、母親と離れると、激しい不安や混乱を示るのが特徴です。
そして母親が戻っても、気持ちを落ち着かせることができず、怒りや抵抗を見せます。そのため養育者が、安全基地として機能しておらず、安心して周囲を探索できません。
Cタイプの子どもの母親は、子どもの欲求に鈍感な傾向があります。また子どもの行動や感情を、適切に調整することが苦手です。
Dタイプ:無秩序・無方向型
Dタイプ(無秩序・無方向型)の子どもは、行動の一貫性に欠けるのが特徴です。養育者に怯える素振りを見せたり、見知らぬ人であっても接近したりします。
Dタイプの子どもの母親は、行動に一貫性がなく、精神的に不安定であると言われています。しかし、データが少ないという問題点もあるので注意が必要です。
ストレンジ・シチュエーション法の覚え方
ストレンジ・シチュエーション法の覚え方は、Bタイプを基準にするのが良いでしょう。一般的な子どものイメージが、Bタイプに当てはまるはずです。
それをもとに、養育者に対して避ける(Aboid)ような態度を示すAタイプ、養育者に依存しているような態度を示すCタイプを覚えるようにしてください。
まずはこの3タイプだけで、ストレンジ・シチュエーション法を理解するようにします。Dタイプは、これらの型に当てはまらないものとして考えるのがおすすめです。
Aタイプ 回避型 | 回避を意味する英語「aboid」 で覚えておく |
Bタイプ 安定型 | 一般的な子どものイメージ これを基準にすると覚えやすい |
Cタイプ アンビバレント型 | 子どもがキャンディ(candy) に依存するという覚え方 ※恋人に依存するような態度 をイメージしてみる |
Dタイプ 無秩序・無方向型 | すべてのタイプに当てはらない 子どもは無秩序でDタイプ |
※あくまでも覚え方の具体例の1つとして、参考にしてみてください。
ストレンジ・シチュエーション法の具体的な実験例
ストレンジ・シチュエーション法では、乳幼児がいる部屋で、母親・実験者・見知らぬ人が出入りします。ここでは、具体的な手順をまとめてみました。
見知らぬ人と2人きりになって、子どもが困惑する場合は、時間を短縮します。また母親と再開したあとは、子どもが遊びに夢中になるまで、時間を延長します。
登場人物 | 時間 | 行動 | |
---|---|---|---|
1 | 母親 子ども 実験者 | 30秒 | 実験者が母と子どもを部屋に入れる。 |
2 | 母親 子ども | 3分 | 椅子に自分の座って本を読んでいる。 子どもが要求したことには応じる。 2分経っても遊ばなければ、遊びに誘う。 |
3 | 母親 子ども 見知らぬ人 | 3分 | 見知らぬ人が入室する。 自分の椅子に座り1分間は黙っている。 1分後、母親と会話し、 2分経ったら子どもに近づいて遊ぼうと誘う。 |
4 | 子ども 見知らぬ人 | 3分 ※a | 母親が退室する(1回目の分離)。 子どもが遊んでいれば見知らぬ人は見守る。 遊ばなければ遊びに誘い、混乱したら慰める。 |
5 | 母親 子ども | 3分 ※b | 母親が入室する(1回目の再開)。 子どもの反応を見て慰める。 子どもが落ち着いたら立ち去る。 |
6 | 子ども | 3分 ※a | 母親との2回目の分離 |
7 | 子ども 見知らぬ人 | 3分 ※a | 見知らぬ人が入室する。 子どもが遊んでいれば見守る。 子どもが混乱したら慰める。 |
8 | 母親 子ども | 3分 | 母親との2回目の再開。 入り口で名前を呼びかけて反応を見る。 見知らぬ人が退室する。 母親は子どもを慰めて、遊べたら遊ぶ。 |
※a:子どもが困惑するなら短縮
※b:子どもが遊びに夢中するまで延長
ストレンジ・シチュエーション法の結果と問題点
ストレンジ・シチュエーション法で、子どもの反応が違うのは、養育者が関係していると考えられています。具体的には、養育者の「感受性」や「応答性」です。
子どもが安定型の養育者は、子どもの感情に敏感で、一貫性のある応答をします。一方で、子どもが無秩序・無方向型の母親は、精神的な不安定さが見られる傾向にあります。
しかしストレンジ・シチュエーション法は、年齢が1歳の子どもを対象にした実験で、生涯同じタイプとは限りません。また傾向を決めつけるのも良くないので、あくまでも参考程度にしておきましょう。
エインズワースのストレンジ・シチュエーション法まとめ
今回はストレンジ・シチュエーション法について、わかりやすくまとめました。
ストレンジ・シチュエーション法とは、乳幼児がいる部屋で、母親・実験者・見知らぬ人が出入りし、その反応を調べるものです。子どもや養育者の傾向を知ることができます。
【ストレンジ・シチュエーション法(SSP)とは】
エインズワースが開発した「乳幼児の愛着行動を測定する手続き」のこと。回避型、安定型、アンビバレント型、無秩序・無方向型の4タイプに分類できる。
ちなみに、「新奇場面法」や「SSP(Strange Situation Procedure)」とも呼ばれています。愛着理論を学ぶうえでも役立つので、覚えておくと良いでしょう。
エインズワースのストレンジ・シチュエーション法について、理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
ストレンジ・シチュエーション法の参考文献
※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。
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