ホーソン実験とは、アメリカの工場で実施された一連の研究を総称するものです。照明実験・継電器(リレー)組み立て作業実験・面接実験・バンク巻き取り観察実験を指しています。
このホーソン実験は、1924年から1932年まで、約8年間かけて行われました。それぞれ実験内容や研究結果も異なります。
そこで今回は、ホーソン実験をわかりやすくまとめてみました。実験内容・研究結果からわかったことについても、簡単に解説しています。
またホーソン実験が名前の由来になった「ホーソン効果」にも触れているので、正しく理解するためにも、ぜひここで紹介する内容を参考にしてみてください。
ホーソン実験とは?わかりやすく解説
ホーソン実験は、心理学者のエルトン・メイヨー、フリッツ・レスリスバーガーらが実施しました。場所はアメリカにある、ウェスタン・エレクトリック社の工場です。
実験内容は、照明の明るさなどの労働条件が、生産性に影響を与えることを証明するというものでした。しかし実験の結果、どのように労働条件を変えても生産性が向上してしまいます。
そして研究を続けると、生産性を上げるには、労働条件よりも従業員を取り巻く人間関係が重要であるとわかりました。これは、当時の労働に対する考え方を変えるきっかけにもなります。
ホーソン実験の内容を簡単に説明
照明実験(1924年〜27年)
照明実験では、照明の明るさを変えて、生産性がどうなるのかを検証しました。
メイヨーらは「照明の明るさを一定に保つ」「照明を段階的に明るくする」という条件下で、生産性を比較します。その結果、どちらも生産性が向上することがわかりました。
またメイヨーらは、生産性が向上したあとに照明を暗くする場合も検証しました。すると生産性は落ちることなく、向上した状態が維持されたそうです。
照明の明るさを 一定に保つ | 生産性が向上 |
---|---|
照明を段階的に 明るくする | 生産性が向上 |
生産性が向上したあと 照明を暗くする | 生産性が向上したまま維持 |
継電器組み立て作業実験(1927年〜29年)
継電器組み立て作業実験では、5人の従業員に継電器(リレー)を組み立て作業を任せます。そして労働条件を変更し、生産性への影響を検証しました。
- 賃金を変える
- 休憩時間を変える
- 労働日数を変える
- 部屋の温度や湿度を変える
- 休憩中に飲食物を提供するなど
その結果、どの条件を変更しても生産性は向上しました。また以前の労働条件に戻すような改悪をしても、向上した状態は維持されたそうです。
つまり実験結果は、物理的な労働条件が生産性に影響しないことを意味するものでした。
面接実験(1928年〜30年)
これまでのホーソン実験から、従業員を取り巻く人間関係や、一人ひとりの感情が生産性に関係していると考えます。その仮説をもとに実施された研究のひとつが、面接実験です。
面談実験では、約20000人の従業員に聞き取り調査を行いました。この人数は、工場で働いている従業員の半分にあたります。
面談では仕事に対する不満や、苦情などの話を聞きます。その結果、個人の経歴・家庭や社会での生活・職場の人間関係の満足度が、労働意欲と関係していることがわかりました。
バンク巻き取り観察実験(1931年〜32年)
バンク巻き取り観察実験では、14人で1つのグループをつくります。そして、電話交換機の配電盤を組み立てるというものでした。
この実験の結果、組織内には公的に形成されたフォーマル・グループだけでなく、自然に生まれたインフォーマル・グループが存在していることを発見します。
フォーマル・グループ | 組織内で意図的につくられた集団 ・営業部、人事部など ・部長・課長・主任など |
---|---|
インフォーマル・グループ | 組織内で自然に生まれる人間関係の集団 ・部署関係なくランチに行く友達 ・役職関係なく趣味の話をするコミュニティ |
さらにインフォーマル・グループは、フォーマル・グループと比較して、生産性に影響を与えることがわかりました。具体的には作業量を制限する・品質検査の評価が変わるなどです。
たとえばグループ内に一人だけ、作業スピードの速い人がいるとします。そのままだと全体のノルマが増える可能性があるので、その人を抑えようとするようなイメージです。
ホーソン実験の結果からわかったこと
ホーソン実験が行われた当時は、経営学者テイラーの「科学的管理法」をもとにした経営管理が主流でした。作業をマニュアル化し、効率は良かったものの、労働者の人間性は軽視されていたそうです。
しかしホーソン実験の結果から、従業員を取り巻く人間関係の重要性が証明されました。そしてメイヨーが、人間関係が生産性に影響するという「人間関係論」を提唱します。
ホーソン実験については、結果の解釈・主張がかけ離れているなどの批判もありますが、当時の考え方を変えるきっかけになったといえるでしょう。
ホーソン実験が名前の由来になった「ホーソン効果」
ホーソン実験において、どのような労働条件でも生産性が向上したのは、観察者がいたためだと考えれます。他者から注目される(期待されていると感じる)ことで、従業員の行動が変化したというわけです。
この現象について、心理学では「ホーソン効果」といいます。ホーソン効果は、学校や職場など、日常生活でもよく見られます。
たとえばアルバイト先に、自分の友人や家族が来たときは、普段よりもテキパキ行動してしまうようなイメージです。心理学の本にはあまり書かれていませんが、ホーソン実験とあわせて覚えておくと良いでしょう。
ホーソン実験の内容・研究結果からわかったことまとめ
今回はホーソン実験の内容や、結果からわかったことについて、簡単にまとめてみました。
ホーソン実験とは、1924年からアメリカの工場で実施された、一連の研究を総称するものです。心理学者のメイヨー、レスリスバーガーらが実施しています。
- 照明実験
- 継電器組み立て作業実験
- 面接実験
- バンク巻き取り観察実験
ホーソン実験の結果、生産性を上げるためには、労働条件よりも従業員を取り巻く人間関係が重要であるとわかりました。これは、当時の労働に対する考え方を変えるきっかけにもなります。
また実験に参加した被験者の様子は、「ホーソン効果」の名前の由来にもなっているので、あわせて覚えておくと良いでしょう。
ホーソン実験の理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
ホーソン実験に関する参考書籍
眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』は、社会で見られるさまざまな心理学を紹介しています。今回紹介した4つのホーソン実験も、この本に書かれていました。
右ページで解説、左ページで図解という構成になっており、文字数は少なめです。心理学の実験内容なども簡潔にまとめらているので、ざっくり内容を知りたい人におすすめします。
※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。
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