系列位置効果とは?心理学の意味・日常例・実験内容をわかりやすく解説

系列位置効果とは

系列位置効果とは、「系列位置が記憶の再生率に影響する」という現象を意味する心理学用語です。系列位置とは、情報を提示する順番のことを表しています。

身近で見られる日常例も多く、恋愛やビジネスなど幅広く活用できるのが特徴です。そのため系列位置効果のメカニズムを知っておくと、あらゆる場面で役立つでしょう。

そこで今回は、系列位置効果とは何かをわかりやすくまとめてみました。心理学の意味・日常生活で見られる具体例・実験内容についても簡単に説明しています。

また系列位置効果と一緒に紹介されやすい、初頭効果や新近効果にも触れているので、ぜひここで解説する内容を参考にしてみてください。

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系列位置効果とは?心理学の意味をわかりやすく解説

そもそも系列位置効果とは、エビングハウスの忘却曲線の提唱者として知られている、心理学者のヘルマン・エビングハウスが名付けました。

これは「情報を提示する順番(系列位置)が、記憶の再生率に影響する」ことを意味します。再生率については、単語を正確に思い出せる割合だと思えば問題ありません。

【系列位置効果とは】
「情報を提示する順番(系列位置)が、記憶の再生率に影響する」という現象を意味する心理学用語。

たとえば10〜15語ほどの簡単な単語を覚える場合、リストの初頭部(最初の方)・中間部分・終末部(最後の方)で、思い出しやすい・思い出しにくいの差が出るイメージです。

ちなみに、再生率を折れ線グラフで表したものを「系列位置曲線」といいます。系列位置効果の実験では、初頭部と終末部の再生率が高くなるので、グラフがU字になります。

系列位置効果とあわせて覚えておきたい「初頭効果」と「新近効果」

系列位置効果において、初頭部の再生率が高まることを初頭効果といいます。よく「第一印象が与える影響は大きい」と言われるのも、初頭効果が関係しています。

それに対して、終末部の再生率が高まるのが新近効果です。こちらは「直前に得た情報の影響を受ける」「去り際の印象が大事」というような場面でよく使われます。

系列位置効果を説明するときには、どちらの心理学用語も一緒に紹介されているので、あわせて覚えておくと良いでしょう。

系列位置効果に関する心理学実験の具体例を紹介

系列位置効果の実験は、1966年に心理学者のグランツァーとカニッツが行いました。2人は自由再生法を用いて、系列位置による再生率の違いを説明しようとします。

実験では被験者に、「バナナ・ピアノ…」のような、簡単な単語をまとめたリストを提示します。そして順番は問わず、提示した単語を思い出してもらうという内容です。

するとリストの初頭部・終末部の成績は良く、系列位置によっては再生率が70%前後を記録しました。一方で、中間部分にある単語の再生率は40%前後でした。

この実験は、初頭効果と新近効果を証明するものとして、心理学の本にもよく出てきます。

実験中に妨害課題を実行すると系列位置効果に影響が出る

先ほどの実験は、単語を提示したあと、すぐに思い出してもらう方法で実施しました(直後再生条件)。その結果、初頭部・終末部のどちらでも系列位置効果が見られました。

そこでグランツァーとカニッツは、単語を提示したあとに10〜30秒ほど空ける条件でも行います(遅延再生条件)。その間、被験者には計算問題などの妨害課題を与えます。

すると初頭部の再生率に変化はありませんでしたが、終末部の再生率は低下しました。つまり別の作業を挟んだことで、最後の方の単語を思い出しにくくなったのです。

系列位置効果はなぜ起こる?メカニズムを簡単に解説

系列位置効果に影響が出る理由として、記憶の保持時間が関係していると考えられます。

初頭部の単語は、すでに長期記憶になっていたため、妨害課題を行っても記憶に残っていました。しかし終末部の単語は、まだ短期記憶のままだったというわけです。

短期記憶の場合、覚えられる容量や保持時間には制限があります。その状態で妨害課題を行ったため、親近効果が消失したというわけです。

初頭部の単語
(初頭効果)
長期記憶を反映している
→妨害課題を与えても再生率は変わらない
終末部の単語
(新近効果)
短期記憶を反映している
→妨害課題を与えると再生率が低下する

系列位置効果が生じない場合もある

自由再生法を用いても、系列位置効果が生じない場合があります。たとえば「バナナ・リンゴ…」など、単語のカテゴリーの影響を受けてしまうケースです。

この単語リストだと、覚えるときに、「フルーツに関連する単語」のような形でまとめることができます。そのため系列位置に関わらず、長期記憶として残ったというわけです。

系列位置曲線を見ても、初頭部・中間部分・終末部に大きな差はなく、再生率は全体的に高くなります。系列位置効果の実験では、このような結果もあることを覚えておきましょう。

日常生活で活用されている系列位置効果の具体例

系列位置効果という言葉を聞いたことがなくても、初頭効果や新近効果は知っているかもしれません。どちらも心理テクニックとして有名で、日常例は多くあります。

たとえば、恋愛における初頭効果はとても重要です。髪型や身だしなみを整えて、第一印象を良くすれば、気になる人とデートに行ける可能性も高くなります。

またマーケティングの手法としては、新近効果もよく使われています。最後に商品のメリットをアピールして、買おうか悩んでいる人の後押しをするようなイメージです。

ただしどちらの場合も、逆に悪い印象を与えてしまうことがあります。日常生活でうまく活用するためにも、系列位置効果の使い方には注意しましょう。

系列位置効果の意味・心理学実験の内容・日常例まとめ

今回は心理学の系列位置効果について、わかりやすくまとめました。

系列位置効果の意味は、以下のとおりです。リストの初頭部に見られる効果を初頭効果、終末部に見られる効果を新近効果と呼んでいます。

【系列位置効果とは】
「情報を提示する順番(系列位置)が、記憶の再生率に影響する」という現象を意味する心理学用語。

系列位置効果は、日常生活で見られる具体例も多く、恋愛やビジネスなど幅広く活用できます。心理学実験の内容を勉強すると、そのメカニズムを知ることができるでしょう。

系列位置効果の理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。

系列位置効果に関係する参考文献

系列位置効果を妨げる要因

言語記銘過程における系列位置効果の分析

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