同調(conformity)とは社会心理学の用語で、「集団に合わせて自分の考えや行動を変えてしまう現象」のことを意味します。
特に日本は、同調を求める社会的圧力が強いといわれています。そのため同調してしまう理由や、同調現象が大きくなる要因を知っておくと、日常においても役立つでしょう。
そこで今回は、心理学の同調とは何かをわかりやすくまとめてみました。具体的な意味や、同調行動の例についても簡単に説明しています。
また同調に関する心理学実験にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
心理学の同調とは?意味をわかりやすく解説
そもそも会社・学校などをはじめとした集団には、類似している人が集まっています。そのため集団の中では、周りと同じように「類似していること」が求められます。
このような圧力(斉一性の圧力)を感じたとき、集団の基準に合わせようと、自分の考えや行動を変えてしまいがちです。この現象を、心理学では「同調」といいます。
【心理学の同調とは】
集団に合わせて自分の考えや行動を変えてしまう現象のこと。
心理学の本によっては、「多数派に合わせてしまう現象」と書かれている場合もありました。どちらも、他者から影響されることを表しているので意味は同じです。
多数派に同調するのは情報的影響・規範的影響が関係している
多数派に同調する原因として、心理学者のドイチェとジェラルドは、情報的影響・規範的影響の2つを提唱しています。
情報的影響とは、他者の意見や行動が、正解に近いという信念にもとづいています。そして自分が正しく判断するために、他者を基準にしようとするイメージです。
規範的影響は、他者から好まれたいという欲求からきています。相手に嫌われたり、仲間はずれにされたりすることを恐れて、集団の規範に迎合してしまうというわけです。
情報的影響 | 正しく行動するため、他者を判断基準にしようとすること |
---|---|
規範的影響 | 他者から好かれるため、集団規範に合わせようとすること |
同調現象の起こりやすさ・大きさを規定する要因
同調現象の起こりやすさ・大きさを規定する要因として、以下のようなものがあります。
- 集団凝集性が高い
- 集団のサイズが大きい
- 集団内の地位が低い
- 自尊感情が低い
- 親和欲求が強い
- 集団内の意見が全員一致する
- 集団に所属していると強く感じる
- 仲の良い人々で集団が構成される
- 人前での公的反応が求められる
たとえば集団のサイズについて、3〜4人までは人数に応じて同調が起こりやすくなりますが、それ以上人数が増えても増大しません。
また集団内の意見が全員一致の場合、同調の影響は強くなります。しかし1人でも反対する人がいると、同調する割合は減少します。
ほかにも「個人主義文化よりも集団主義文化」「男性よりも女性」「個人の私的判断が優勢される状況よりも人前での公的反応が求められる状況」で、同調行動はよく見られます。
同調行動に関する心理学実験を簡単に説明
同調の心理学実験といえば、アッシュの同調実験が有名です。アメリカの社会心理学であるソロモン・アッシュが実施し、同調現象を説明する際の例としてもよく挙げられます。
これは「見本と同じ長さの線を選ぶ」という内容です。実験は8人(被験者と7人のサクラ)で行い、被験者には一番最後に回答してもらいます。
問題自体はとても簡単で、1人の場合、間違える人はほとんどいません。しかしほかの7人全員が誤った回答を選ぶと、被験者の誤答率が上昇してしまいました。
つまり正しくないとわかっていても、被験者はサクラの回答に同調したのです。自分以外の全員が異なる回答をしたことで、周りに合わせようとしたのだと考えられます。
日本人に多い?日常で見られる同調行動の具体例
同調は無意識・意識的に関係なく起こるので、日常でもよく見られます。特に日本は、同調を求める社会的圧力が強いと、心理学本で紹介されることもあります。
同調の具体例として有名なのが、学校のいじめ問題です。仲間はずれにされたくないから、自分もいじめる側に加担してしまったという話は、誰でも聞いたことがあるでしょう。
ほかにもどちらを買うか迷ったときに人気のある方を選んだり、会社の雰囲気に合わせて髪型や服装を変えたりするのも、同調行動のひとつだといえます。
心理学における同調の意味・同調行動の具体例まとめ
今回は心理学の同調について、簡単にまとめてみました。
同調の意味とは、以下のとおりです。心理学の本によっては、「多数派に合わせてしまう現象」と書かれている場合もあります。
【心理学の同調とは】
集団に合わせて自分の考えや行動を変えてしまう現象のこと。
特に日本人の場合、同調行動がよく見られることで知られています。そのため同調する理由や、同調現象が大きくなる要因は、チェックしておくと良いでしょう。
心理学の同調の理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
心理学の同調に関係する参考文献
・間接圧力による中学生の同調:規範的および情報的影響と課題重要性の効果
※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。
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