慈悲の瞑想とは「自分や相手に対する、幅広い友愛の気持ち」を育む方法のひとつです。やり方は簡単で、セルフコンパッションなどにも用いられますが、危険性もあります。
そこで今回は、慈悲の瞑想をわかりやすくまとめてみました。具体的な効果やメリット、唱えるフレーズの例文なども紹介しています。
また慈悲の瞑想で効果がないと感じたり、つらい感情を思い出したときの対処法もまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
慈悲の瞑想とは?意味を簡単に解説
そもそも慈悲とは、パーリ語の「metta」の訳で、「自分や相手に対する、幅広い友愛の気持ち」を意味します。それを育む方法のひとつが、慈悲の瞑想です。
慈悲の瞑想は、まず特定の人を心に思い浮かべて行います。そして相手への好意が込められた慈悲の言葉を、何度も繰り返すというものです。
そしてこの慈悲の言葉を、徐々に自分自身にも向けていきます。唱えるフレーズは簡単で、やり方自体も難しくはないので、気軽に実践できるでしょう。
ただし慈悲の瞑想では、効果がないと感じたり、つらい感情を思い出したりする危険性もあります。そのため、正しく理解したうえで行うことが重要です。
慈悲の瞑想の効果がすごい?メリットを説明
慈悲の瞑想には「不安・うつなどのネガティブな感情が減る」という効果が期待できます。また「幸せ・楽しさなどのポジティブな感情が増える」という効果も期待できます。
そしてある研究よると、慈悲の瞑想の効果は「行った回数による」そうです。つまり継続して実践するほど、慈悲の瞑想の効果を実感しやすくなります。
ちなみに効果を得るためには、心からそう感じて、慈悲の瞑想を行うことが重要です。そのため、やり方や唱えるフレーズは、自分に合うように変更しても問題ありません。
具体的な慈悲の瞑想のやり方
まずは横になっても座っても問題ないので、心地よい姿勢になります。そして胸・膝の上など、身体の安心できるところに手を置いてください。
目は半目だけ閉じる、完全に閉じる、どちらでも構いません。ゆっくり深呼吸をして、呼吸に意識を向けながら、心も身体もリラックスした状態をつくります。
準備ができたら、呼吸から言葉に少しずつ意識を向けてください。慈悲の言葉で全身を満たすように、やさしい気持ちで、何度も繰り返します。
慈悲の言葉を唱える回数に決まりはありませんが、1フレーズあたり20回を目安にすると良いでしょう。最後は慈悲の言葉を手放し、ありのままの自分を味わいながら受け入れます。
【例】慈悲の瞑想のフレーズ全文
ここでは慈悲の瞑想のフレーズをまとめてみました。「あなた」を主語にした文章と、「私」を主語にしたパターンで紹介しています。
あくまでも例文なので、フレーズを変えても問題ありません。実際にやってみて、自分に合った慈悲の言葉を探してみてください。
また自分で慈悲の言葉を考えるときには、簡単でわかりやすい、やさしい単語がおすすめです。そして心からそう思える言葉を、選ぶようにしましょう。
1、「あなた」を主語にした慈悲の瞑想のフレーズ
いきなり自分に向けて、慈悲の瞑想を行うと、抵抗感を感じる人もいます。そのためまずは、「あなた」を主語にしたフレーズがおすすめです。
自分の大切な人・笑顔にしてくれる動物など、思い浮かべた特定の相手に、好意を伝えるようなイメージでやってみてください。
【慈悲の瞑想:「あなた」が主語】
あなたが幸せでありますように
あなたが穏やかでありますように
あなたが健康でありますように
あなたが自分の良さを忘れませんように
あなたが苦しまずに生きていけますように
あなたが悩みがなくなりますようになど
2、「あなたと私」を主語にした慈悲の瞑想のフレーズ
次の段階では、相手に対する好意のなかに、自分自身を入れます。「あなたと私」を主語にしたフレーズで、慈悲の瞑想を行ってみてください。
相手だけでなく、自分にも好意を向けられるように意識しましょう。
【慈悲の瞑想:「あなたと私」が主語】
あなたと私が幸せでありますように
あなたと私が穏やかでありますように
あなたと私が健康でありますように
あなたと私が自分の良さを忘れませんように
あなたと私が苦しまずに生きていけますように
あなたと私が悩みがなくなりますようになど
3、「私」を主語にした慈悲の瞑想のフレーズ
今度は相手への好意を手放し、自分だけに意識を向けます。「私」を主語にしたフレーズで、慈悲の瞑想を行ってみてください。
相手を愛したように、自分自身を愛すのがポイントです。ありのままの状態を味わいながら、その感情を受け入れます。
【慈悲の瞑想:「私」が主語】
私が幸せでありますように
私が穏やかでありますように
私が健康でありますように
私が自分の良さを忘れませんように
私が苦しまずに生きていけますように
私が悩みがなくなりますようになど
効果がない場合・慈悲の瞑想の危険性について
慈悲の瞑想は、最初うまくいった気がしても、途中から効果がないと感じることがあります。人によっては不安感が増したり、つらい感情を思い出したりすることもあるでしょう。
これを心理学では「バックドラフト」と呼んでいます。バックドラフトが生じるのは自然なことで、やり方が間違っているわけでないので安心してください。
バックドラフトを感じたら、「これはバックドラフトだね」と、普通のことのように受け止められるか試してみます。または呼吸や周りの音など、別のものに意識を向けるのも良いでしょう。
もしつらいと感じる場合は、無理をする必要はありません。焦らず自分のペースで、慈悲の瞑想を行うようにしてください。
慈悲の瞑想の効果・フレーズ全文・危険性まとめ
今回は慈悲の瞑想について、わかりやすくまとめてみました。
慈悲の瞑想とは「自分や相手に対する、幅広い友愛の気持ち」を育む方法のひとつです。やり方・フレーズは、自分に合ったものに変更できます。
バックドラフトの危険性もありますが、慈悲の瞑想を続けることで、心理的な効果を期待できます。そのためセルフコンパッションなど、あらゆる場面で活用できるでしょう。
慈悲の瞑想について、理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
関連記事:セルフコンパッションとは?
慈悲の瞑想の参考書籍
慈悲の瞑想に関する書籍として、「マインドフル・セルフ・コンパッションワークブック」などがあります。
これはセルフコンパッションの本ですが、トレーニング方法のひとつとして、慈悲の瞑想が紹介されています。具体的なやり方も書かれているので、わかりやすいでしょう。
またワークブックの形式になっており、慈悲の瞑想を実践することができます。気になる人は、ぜひ一度チェックしてみてください。
慈悲の瞑想の参考文献
・セルフ・コンパッション尺度日本語版の作成と信頼性,妥当性の検討
・Buddhist-Derived Loving-Kindness and Compassion Meditation for the Treatment of Psychopathology
※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。
※文章や画像を引用していただいても構いません。その際にはサイト名を明記のうえ、該当記事へ飛べるようにURLの設置をお願いいたします(詳しくは「引用・著作権について」をご確認ください)。