セルフコンパッションとは?実践する意味・心理学の効果・やり方を解説

セルフコンパッションとは

セルフコンバッションとは「自分(self)への思いやり(compassion)」を意味する心理学用語です。考え方がマインドフルネスと似ていることから、いま注目を集めています。

そこで今回は、セルフコンバッションとは何かをわかりやすくまとめてみました。実践することによる心理学的な効果や、やり方についても紹介しています。

特に自分を責めやすい人・自分に厳しい人は、セルフコンパッションの考え方が役立つでしょう。簡単なセルフコンパッション診断もできるので、ぜひ参考にしてみてください。

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セルフコンパッションとは?意味をわかりやすく解説

そもそもセルフコンパッションとは、心理学者のクリスティン・ネフ博士が提唱した考え方です。大切な人に優しく接するのと同様に、自分にも優しく接することを意味します。

たとえば試合でミスをした友人に「あれは仕方ないよ、気にしないで」と励ますことはできるでしょう。その思いやりを、自分自身にも向けてあげるのが、セルフコンパッションです。

【セルフコンパッションとは】
「自分(self)への思いやり(compassion)」を意味する心理学用語。大切な人に優しく接するのと同じように、自分にも優しく接するという考え方

ちなみにセルフコンパッションは、自尊心の考え方とは異なります。一般的に自尊心は、自分をポジティブに評価して、他者よりも優れているという感情を表しています。

それに対してセルコンパッションは、「私たちは皆完璧ではない」と自分のあるがままの姿を受け入れ、自分を思いやるという気持ちです。

つまり自分が優れていると評価するわけではなく、いつも自分の味方でいるという考え方が、セルフコンパッションでは重要になります。

セルフコンパッションの構成要素

セルフコンパッションは、主に3つの構成要素から成り立っています。具体的には「自分への優しさ」「共通の人間性」「マインドフルネス」です。

ここからはそれぞれの意味について、わかりやすく解説していきます。

自分への優しさ

失敗したり何か間違ったりしたときは、自分のことを責めがちです。しかしセルフコンパッションを用いることで、自分自身を励まし、傷つくことを防ぎます。

また困難な状況にいるときでも、自分を積極的になぐさめて落ち着かせようとするのが、この「自分への優しさ」です。

共通の人間性

私たちは誰しも間違いを犯すことがあります。むしろ「常に正しいことしかしない」という人間は、この世に存在しないでしょう。

つまり、あなたが失敗したり困難に直面したりするのは、ある意味で当然ともいえます。そしてその経験をもとに、人間は成長できるのです。

このように、私だけじゃない・お互いに結びついているという感覚が、セルフコンパッションの「共通の人間性」です。

マインドフルネス

マインドフルネスは、「今この瞬間の自分を、ありのまま受け入れること」を表します。たとえそれが、苦しみやネガティブな感情だとしても、そのままの状態で受け入れましょう。

自分へマインドフルに接することで、「私は辛く感じているんだ」という気づきを得ることができます。そこから自分を責めたり、厳しくしたりする必要はありません。

※セルフコンパッションとマインドフルネスの違い

セルフコンパッションとは、「自分の苦しみに対して、マインドフルに接することができてから、自分にも優しくできる」という考え方です。

そのためマインドフルネスは、あくまでもセルフコンパッションの基礎部分となります。「今この瞬間の自分を、ありのまま受け入れること」ができないと、自分を思いやることにはつながりません。

どちらも似たような意味ですが、セルフコンパッションとマインドフルネスの違いを混同しないように注意しましょう。

セルフコンパッションの効果とは?

自分に思いやりをもって接すると、さまざまなメリットがあります。そのため今回は、主なセルフコンパッションの効果をまとめてみました。

セルフコンパッションを用いることで、自分の感情をなだめて、気持ちを落ち着かせることができるでしょう。そのため日常生活だけでなく、介護や子育てでも役立つはずです。

【主なセルフコンパッションの効果】
自分にも相手にも優しくできる
あるがままの自分を受け入れられる
恥や失敗を恐れなくなる
落ち込んでから復帰が早くなる
行動の動機付けにもなる
辛い感情に向き合えるようになる
自分の良さを認められるようになる
自分自身を許すことができるなど

ただし自分に優しく接すると、辛い感情を思い出してしまうケースもあります。これを「バックドラフト」といいます。

バックドラフトによる不安や恐怖は自然なプロセスですので、心配することはありません。もし支援者がいないと厳しい場合は、無理せず行うようにしましょう。

実践方法:セルフコンパッションのやり方を説明

ここではセルフコンパッションのやり方として、「慈悲の瞑想」を紹介します。

慈悲の瞑想とは、自分の心に響くような、慈悲のある言葉を探すというやり方です。具体例として、以下のような言葉がよく使われています。

【慈悲の言葉】
私が幸せでありますように
私が穏やかでありますように
私が健康でありますように
私が自分の良さを忘れませんように
私が苦しまずに生きていけますように
私が悩みがなくなりますようになど

最初は自分の大切な人へ伝えるように、「あなたが〜」を主語にすると良いでしょう。それから「私が〜」を主語にして、自分も聞きたいと思えるような言葉を探してみてください。

また慈悲の瞑想を実践するときは、お腹や心臓など、自分の安心する部分に手を当てておくのがおすすめです。姿勢は座っている状態でも、横になっている状態でも構いません。

参考:簡単にできる短縮版セルフコンパッション診断

現時点で自分のセルフコンパッションがどれくらいなのか、チェックする方法もあります。今回は簡単にできる、セルフ・コンパッション尺度12項目短縮版(有光ら,2016)をもとにまとめてみました。

短縮版の質問は全部で12問あり、すべて回答すると結果がわかります。以下の選択肢から、自分に当てはまるものを選んでください。

セルフコンパッションの質問(全12問)

【診断の選択肢】
1点→ほとんど全くそうしない
2点→あまりそうしない
3点→どちらとも言えない
4点→まあまあそうする
5点→ほとんどいつもそうする

  1. 自分のパーソナリティの好きでないところについては理解し、やさしい目で見るようにしている。
  2. 何かで苦しい思いをしたときには、感情を適度なバランスに保つようにする。
  3. 自分の失敗は、人間のありようの1つであると考えるようにしている。
  4. 苦労を経験しているとき、必要とする程度に自分自身をいたわり、やさしくする。
  5. 何か苦痛を感じることが起こったとき、その状況についてバランスのとれた見方をするようにする。
  6. 自分自身にどこか不十分なところがあると感じると、多くの人も不十分であるという気持ちを共有していることを思い出すようにする。

【※7問目以降は、逆にして計算します】
1点→ほとんどいつもそうする
2点→まあまあそうする
3点→どちらとも言えない
4点→あまりそうしない
5点→ほとんど全くそうしない

  1. 自分にとって重要なことを失敗したとき、無力感で頭がいっぱいになる。
  2. 気分が落ち込んだとき、多くの人がおそらく自分より幸せであるという気持ちになりがちである。
  3. 自分にとって大切な何かに失敗したとき、自分の失敗の中でひとりぼっちでいるように感じる傾向がある。
  4. 気分が落ち込んだときには、間違ったことすべてについて、くよくよと心配し、こだわる傾向にある。
  5. 自分自身の欠点や不十分なところについて、不満に思っているし、批判的である。
  6. 自分のパーソナリティの好きでないところについては、やさしくなれないし、いらだちを感じる。

※得点を計算しやすいように診断項目の順番を変更しておりますので、あくまでも参考程度にご利用ください。

セルフコンパッションの結果について

12問すべてに回答したら合計点数を出して、そこから平均点を算出します。おおよそ3.0点前後が平均値で、数値が高いほど、自分に優しくできていると考えられます。

もし点数が悪くても、心配することはありません。セルフコンパッションは身につけられるスキルなので、少しずつトレーニングしていきましょう。

ちなみに実際の現場でも使われている、全26問のセルフコンパッション診断も用意されています。別ページでやり方を解説しているので、ぜひこちらも試してみてください。

関連記事:セルフコンパッション診断(全26問)

セルフコンパッションを実践する意味・効果・やり方まとめ

今回はセルフコンパッションの意味・効果・やり方をまとめました。

改めてセルフコンパッションとは、「自分への思いやり」を意味する心理学用語です。自分に優しくすることで、気持ちが楽になったり、辛い感情に向き合えたりします。

ここでは実践方法として「慈悲の瞑想」を紹介しましたが、やり方はほかにもあります。セルフコンパッションの理解を深めるためにも、ぜひ内容を参考にしてみてください。

関連記事:セルフコンパッションの鍛え方・トレーニング方法

関連記事:セルフコンパッション本のおすすめ

セルフコンパッションの参考書籍

セルフコンパッションに関する書籍として、「セルフコンパッション[新訳版]」や「マインドフル・セルフ・コンパッション ワークブック」などがあります。

セルフコンパッション[新訳版]

「セルフコンパッション[新訳版]」は、提唱者のクリスティン・ネフ博士が著者の本です。セルフコンパッションの定義・考え方・構成要素などが、わかりやすく解説されています。

マインドフル・セルフ・コンパッションワークブック

「マインドフル・セルフ・コンパッション ワークブック」は、セルフコンパッションの実践方法がまとめられており、直接書き込めるようになっています。その中に、短縮版のセルフコンパッション診断も掲載されていました。

気になる人は、ぜひチェックしてみてください。

セルフコンパッションの参考文献

※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。

※文章や画像を引用していただいても構いません。その際にはサイト名を明記のうえ、該当記事へ飛べるようにURLの設置をお願いいたします(詳しくは「引用・著作権について」をご確認ください)。

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