外発的動機づけ(extrinsic motivation)とは、「報酬や罰など外側から与える刺激によって、やる気を引き出すこと」を意味する心理学用語です。
教育や保育の現場など、日常生活でもよく見られる外発的動機づけですが、実はデメリットもあります。誤った使い方をすると、逆効果になってしまう場合もあるので注意が必要です。
そこで今回は、外発的動機づけをわかりやすくまとめてみました。心理学の意味や、具体例についても簡単に紹介しています。
また外発的動機づけと内発的動機づけとの違いにも触れているので、正しく理解するためにも、ぜひここで紹介する内容を参考にしてみてください。
外発的動機づけとは?心理学の意味を簡単に解説
そもそも動機づけとは、「行動を引き起こす心の動き」のことです。難しく感じる場合、やる気や意欲のことだと思ってもらえれば問題ありません。
そして報酬や罰など外側から与える刺激によって、やる気を引き出すことを「外発的動機づけ」といいます。具体例としては、お金・賞品・褒め言葉などがあります。
【外発的動機づけとは】
報酬や罰など外側から与える刺激によって、やる気を引き出すこと。
これは、アメとムチを上手に使って指導するようなイメージです。ご褒美を用意すればそれを得ようとし、罰を設定すればそれを回避しようとするでしょう。
また外発的動機づけは、興味のないことに対してもやる気を引き出せます。しかし本当の意味で動機づけができたわけではなく、他律的・依存的になってしまうことも考えられます。
教育や保育の現場で見られる外発的動機づけの具体例
外発的動機づけは、教育や保育の現場でよく見られます。
たとえば子どもが英語の宿題をしてきたら、花丸を書いてあげるとします。花丸をもらえて嬉しかった子どもは、それが報酬となり、勉強することに対してやる気を出すでしょう。
ほかにも「スポーツで金メダルを目指して練習する」「お小遣いをもらうためにお手伝いをする」というような行動も、外発的動機づけの具体例といえます。
また報酬だけでなく、罰も外発的動機づけになります。「テストの点数が悪かったらご褒美をあげない」「勉強しないならゲーム禁止」のようなイメージです。
外発的動機づけと内発的動機づけの違い
外発的動機づけとは反対に、内側から湧いてくる自発的なやる気のことを「内発的動機づけ」といいます。好き・面白いという気持ちや、興味・好奇心などが当てはまります。
内発的動機づけは、興味さえあれば、外的要因に関わらず行動できるのが特徴です。人によっては、行動すること自体が目標となる場合もあるでしょう。
つまり外発的動機づけと内発的動機づけは、「やる気の源泉」が異なります。報酬や罰によってやる気が出ているのか、それとも自発的なやる気なのかを判断してください。
ちなみに、最初はまったく関心がなくて外発的動機づけに頼るような状態でも、次第に内発的動機づけに移行することはあります。
外発的動機づけのメリット・デメリット
外発的条件づけのメリットは、興味のないことでも動機づけができることでしょう。そのままやる気を育むことができれば、自らの意思で行動するようになります。
このように報酬などの外発的動機づけによって、内発的動機づけが高まる現象を、心理学ではエンハンシング効果といいます。
しかし外発的条件づけには、デメリットもあるので注意が必要です。外発的動機づけに頼りすぎると、「報酬がないとやる気が出ない」という状況になってしまいます。
このように外発的動機づけによって、内発的動機づけが下がってしまう現象を、心理学ではアンダーマイニング効果といいます。
外発的動機づけが絶対悪いわけではありませんが、報酬や罰などを与えるときには、マイナスに働く場合があることも覚えておいてください。
外発的動機づけの意味・具体例・内発的動機づけとの違いまとめ
今回は心理学の外発的動機づけについて、簡単にまとめました。
外発的動機づけの意味は、以下のとおりです。アメとムチを上手に使って指導するイメージで、教育や保育の現場など、日常で見られる例も多いと思います。
【外発的動機づけとは】
報酬や罰など外側から与える刺激によって、やる気を引き出すこと。
ただし外発的動機づけには、デメリットもあるので注意が必要です。内発的動機づけとの違いを頭に入れておけば、やる気を引き出すために、うまく活用できるでしょう。
外発的動機づけの理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
外発的動機づけに関する参考書籍
眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』は、社会で見られるさまざまな心理学を紹介しています。外発的動機づけについては、アンダーマイニング効果と一緒に書かれていました。
右ページで解説、左ページで図解という構成になっており、文字数は少なめです。心理学の実験内容なども簡潔にまとめらているので、ざっくり内容を知りたい人におすすめします。
決定版 面白いほどよくわかる!心理学
『決定版 面白いほどよくわかる!心理学』は、心理学の歴史や専門用語をフルカラーでまとめた心理学本です。すべてのテーマに、図解やイラストがついています。
外発的動機づけについては、子どもの成長に関する心理学をまとめている項目で触れられていました。難しい言葉は使われておらず、初心者でも内容がわかりやすいと思います。
心理学 新版
『心理学 新版』には、大学から大学院レベルの心理学がまとめられている一冊です。動機づけの章もあり、そこで外発的動機づけについて解説されています。
外発的動機づけから内発的動機づけに移行するという内容も、この本に書かれていました。ページ数も多めですが、心理学の教科書やテキストが欲しい人にはぴったりだと思います。
新・動機づけ研究の最前線
『新・動機づけ研究の最前線』では、動機づけに関する理論や研究が、丁寧に解説されています。ほかの心理学本と比較しても、かなり専門的な内容だと思いました。
外発的動機づけの理論を発展させた「自己決定理論」についても、この本で解説されています。より詳しく勉強したい人は、チェックしておくと良いでしょう。
※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。
※文章や画像を引用していただいても構いません。その際にはサイト名を明記のうえ、該当記事へ飛べるようにURLの設置をお願いいたします(詳しくは「引用・著作権について」をご確認ください)。