内発的動機づけ(intrinsic motivation)とは、「興味・関心・好奇心のように、からだの内側から自発的にやる気が湧いてくること」を意味する心理学用語です。
内発的動機づけは、子どもの成長においても重要で、教育や保育の現場でもよく見られます。やる気を引き出すためにも、メリット・デメリットや高める方法を知っておくと良いでしょう。
そこで今回は、内発的動機づけとは何か、わかりやすくまとめてみました。心理学の意味や、具体例についても簡単に紹介しています。
また内発的動機づけと外発的動機づけとの違いにも触れているので、正しく理解するためにも、ぜひここで紹介する内容を参考にしてみてください。
内発的動機づけとは?心理学の意味をわかりやすく解説
そもそも動機づけとは、「行動を引き起こす心の動き」のことです。難しく感じる場合、やる気や意欲のことだと思ってもらえれば問題ありません。
そして興味・関心・好奇心のなど、からだの内側から湧いてくる自発的なやる気のことを「内発的動機づけ」といいます。好きという気持ちや、面白いという感情なども当てはまります。
【内発的動機づけとは】
興味・関心・好奇心のように、からだの内側から自発的にやる気が湧いてくること。活動すること自体が目的になっている。
内発的動機づけが高まると、物事に対して自らの意思で行動するようになります。また自分で目標を設定し、達成するために努力を継続できるのも特徴です。
特に子どもの成長において、内発的動機づけを芽生えさせることは重要だといえます。
教育や保育の現場で見られる内発的動機づけの具体例
内発的動機づけは、日常生活でもよく見られます。特に教育や保育など、子どもと関わるような現場の具体例であれば、内容をイメージしやすいのでおすすめです。
たとえば学校の授業で、動物や植物を育てることがあります。その経験を通して内発的動機づけが高まれば、子どもは図鑑を読んで勉強したり、家でも育てようとしたりするでしょう。
またスポーツが好きな子どもは、もっと上手くなるため・大会で勝つために自主練習をしていると思います。このような例も、内発的動機づけが高まっていると考えられます。
内発的動機づけと外発的動機づけの違い
内発的動機づけとは反対に、報酬や罰など外側から与える刺激によって、やる気を引き出すこともできます。これを「外発的動機づけ」といい、お金・賞品・褒め言葉などが当てはまります。
外発的動機づけは、アメとムチを上手に使って指導することをイメージすると良いでしょう。ご褒美を用意すればそれを得ようとし、罰を設定すればそれを回避しようとします。
つまり内発的動機づけと外発的動機づけは、「やる気の源泉」が異なります。自発的なやる気なのか、それとも報酬や罰によってやる気が出ているのかを判断してください。
外発的動機づけから内発的動機づけに移行する場合もある
はじめは興味がなくて、外発的動機づけに頼るような状態でも、次第に内発的動機づけに移行することはあります。
たとえば親に褒められること(外発的動機づけ)が嬉しくて、スポーツを始めたとします。そしてしばらくすると、運動すること自体が楽しくなる(内発的動機づけ)という例です。
このように外発的動機づけを活用することで、内発的動機づけが高まる現象のことをエンハンシング効果といいます。
しかし一方で、外発的動機づけが逆効果になる場合もあります。「お小遣いをもらえないなら手伝いたくない」というようなイメージです。
このように外発的動機づけによって、内発的動機づけが下がることをアンダーマイニング効果といいます。どちらも動機づけに関係する心理学用語なので、一緒に覚えておくと良いでしょう。
内発的動機づけのメリット・デメリット
内発的条件づけのメリットは、外的刺激に左右されず、自らの意思で行動できる点だと思います。持続性が高く、自分で設定した目標を達成するためなら、努力を惜しまないはずです。
しかし無関心のことに対して、内発的動機づけを高めるには時間がかかります。たとえば海外に興味があれば、英語の勉強に前向きになれますが、何もなければやる気は出ないでしょう。
また興味や関心には個人差があり、同じ結果になるとは限らない点も、内発的動機づけのデメリットです。報酬や罰を設定する外発的動機づけの方が、同じ結果を再現しやすいと思います。
内発的動機づけを高めるには3つの欲求を満たすことが重要
内発的動機づけを高める方法については、心理学者のエドワード・L・デシと、リチャード・M・ライアンの「自己決定理論」が参考になります。
これは、内発的動機づけの理論を発展させたものです。そこでは、自律性・有能感・関係性という3つの心理的欲求を満たすことが重要だと書かれています。
自律性 | 自らの意思で決定したいという欲求 |
---|---|
有能感 | 自分の有能さを示したいという欲求 |
関係性 | 他者と良好な関係を築きたいという欲求 |
たとえば、子どものやりたいことをやらせてあげる・頑張ったことを褒めてあげるなどです。また友人が助けてくれたときは、自分も相手のために貢献してあげると良いでしょう。
ちなみにデシとライアンは、これら3つの欲求が満たされると、人としての適応的な発達・精神的健康・心理的成長をもたらすと説明しています。
内発的動機づけの意味・具体例・高める方法まとめ
今回は心理学の内発的動機づけについて、簡単にまとめました。
内発的動機づけの意味は、以下のとおりです。特に教育や保育など、子どもと関わるような現場の具体例であれば、イメージしやすいと思います。
【内発的動機づけとは】
興味・関心・好奇心のように、からだの内側から自発的にやる気が湧いてくること。活動すること自体が目的になっている。
特に外発的動機づけとの違いを頭に入れておけば、やる気を引き出すために、うまく活用できるでしょう。内発的動機づけを高める方法についても、覚えておくことをおすすめします。
内発的動機づけの理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
内発的動機づけに関する参考書籍
眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』は、社会で見られるさまざまな心理学を紹介しています。内発的動機づけについては、アンダーマイニング効果と一緒に書かれていました。
右ページで解説、左ページで図解という構成になっており、文字数は少なめです。心理学の実験内容なども簡潔にまとめらているので、ざっくり内容を知りたい人におすすめします。
決定版 面白いほどよくわかる!心理学
『決定版 面白いほどよくわかる!心理学』は、心理学の歴史や専門用語をフルカラーでまとめた心理学本です。すべてのテーマに、図解やイラストがついています。
内発的動機づけについては、子どもの成長に関する心理学をまとめている項目で触れられていました。難しい言葉は使われておらず、初心者でも内容がわかりやすいと思います。
心理学 新版
『心理学 新版』には、大学から大学院レベルの心理学がまとめられている一冊です。動機づけの章もあり、そこで内発的動機づけについて解説されています。
外発的動機づけから内発的動機づけに移行するという内容も、この本に書かれていました。ページ数も多めですが、心理学の教科書やテキストが欲しい人にはぴったりだと思います。
新・動機づけ研究の最前線
『新・動機づけ研究の最前線』では、動機づけに関する理論や研究が、丁寧に解説されています。ほかの心理学本と比較しても、かなり専門的な内容だと思いました。
内発的動機づけの理論を発展させた「自己決定理論」についても、この本で解説されています。より詳しく勉強したい人は、チェックしておくと良いでしょう。
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