集団思考とは、「集団で協議すると不合理な意思決定や誤った判断をしてしまう現象」を意味する心理学用語です。集団浅慮(しゅうだんせんりょ)や、グループシンクともいいます。
集団思考は、無意識のうちに陥ってしまうこともあります。いじめ問題をはじめ、身近な例も多いので、原因や兆候を確認しておくと良いでしょう。
そこで今回は、集団思考とは何かをわかりやすくまとめてみました。心理学の意味・事例についても簡単に説明しています。
また集団思考の対策方法にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
集団思考とは?心理学の意味をわかりやすく解説
そもそも集団思考は、心理学者であるアーヴィング・ジャニスが提唱しました。
これは「「集団で協議すると不合理な意思決定や誤った判断をしてしまうことがある」という現象です。集団浅慮・グループシンクとも呼ばれています。
【集団思考とは】
「集団で協議すると不合理な意思決定や誤った判断をしてしまう」という現象。集団浅慮やグループシンクとも呼ばれる。
集団思考は、閉鎖的なグループで集団凝集性が高い場合に発生しやすくなります。また強力なリーダーの存在・脅威となる外部の存在なども関係してきます。
また集団思考の兆候の具体例は、以下の通りです。これらが改善しない場合、情報収集や議論・検討が不十分になり、意思決定に問題が起きてしまいます。
- 自分たちが無敵であるという幻想を持つ
- 自分たちの立場を合理化しようとする
- 集団の価値観を過剰に信仰する
- 外部の集団に対して偏見を持つ
- 波風を立てないように同調する
- 反対意見を抑制しようとする
- 反対派に対して圧力をかける
- 意見が全員一致しているという幻想を持つ
集団思考の具体例やジャニスが用いた事例を簡単に紹介
集団思考の具体例には、スペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故があります。
この事故は、技師たちの進言を無視して、NASAの上層部が打ち上げを決行したというものです。その結果、7名の乗組員全員が亡くなってしまいました。
またジャニスは集団思考の事例として、アメリカ政府の失敗を紹介しています。具体的には、真珠湾攻撃・朝鮮戦争・ベトナム戦争・ピッグス湾事件・ウォーターゲート事件などです。
- 真珠湾攻撃:日本軍を過小評価した
- 朝鮮戦争:中国が参戦する可能性を軽視した
- ベトナム戦争:戦線を無謀に拡大した
- ピッグス湾事件:キューバ侵攻の作戦計画が杜撰だった
- ウォーターゲート事件:事件への危機感が欠如していた
日本においても、津波対策が不十分だった「福島第一原子力発電所事故」などが、集団思考の具体例として挙げられます。
日本でも見られる集団思考の身近な例
集団思考は身近な例も多く、日常生活においてもよく見られます。イメージしやすいのは、学校のいじめ問題です。
いじめる側のグループを見ると、集団凝集性が高く、反対意見が出にくい状況になっています。仲間から嫌われることを恐れて、加担してしまったという話も聞くでしょう。
また企業において同じで、たとえばワンマン社長を想像するとわかりやすいと思います。社員の団結力があるように見えても、実は同調圧力が生じているだけかもしれません。
特に日本は、同調を求める社会的圧力が強いといわれているため、集団思考が起こりやすいと考えられます。
集団思考の原因と対策方法
集団思考は、自分が所属するグループへの過信・外集団の軽視・反対意見の遮断などが原因で発生します。このような状況で、合理的な判断をすることは難しいでしょう。
そこでジャニスは、集団思考の対策方法として、以下のような提案をしています。
- 反対意見や疑問をメンバーから求める
- リーダーは中立の立場で聞く
- リーダーの意見は最後に述べる
- 小さなグループに分けて討論を進める
- 外部の専門家を参加させて異議を求める
- 悪魔の代弁者の役割を一人以上に与える
ちなみに「悪魔の代弁者」とは、反対の立場から眺める役割のことです。すべての会議において、一人以上の悪魔の代弁者がいるべきであると、ジャニスは説明しています。
この内容を踏まえると、リーダーの存在が、集団思考に大きな影響を与えることがわかると思います。そのため集団をまとめる立場にある人は、ぜひ参考にしてみてください。
集団思考の意味・身近な例・対策方法まとめ
今回は心理学の集団思考について、わかりやすくまとめてみました。
集団思考の意味は、以下のとおりです。閉鎖的なグループで集団凝集性が高い場合に発生しやすいもので、強力なリーダーの存在・脅威となる外部の存在なども関係してきます。
【集団思考とは】
「集団で協議すると不合理な意思決定や誤った判断をしてしまう」という現象。集団浅慮やグループシンクとも呼ばれる。
事例を見てもわかるように、集団思考は無意識のうちに陥ってしまう場合があります。いじめ問題をはじめ、身近な例も多いので、原因や対策をチェックしておくと良いでしょう。
集団思考の理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
集団思考に関係する参考文献
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