リターンポテンシャルモデルとは、「集団が持つ規範の強さを測定する方法」のことです。
たとえば集合時間に関する規範であれば、そのグループにおいて、何分前に来るのがベストなのかを分析できます。また許容範囲や、結晶度などもわかるのが特徴です。
そこで今回は、リターンポテンシャルモデルとは何かをわかりやすくまとめてみました。心理学の意味や、測定方法の具体例についても簡単に説明しています。
またリターンポテンシャルモデルから読み取れる内容も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
リターンポテンシャルモデルとは?意味をわかりやすく解説
たとえば会社の場合、「新人が電話に出る」「1時間前には出社する」など、職場によって暗黙のルールがあると思います。これを心理学では、集団規範といいます。
そして、集団規範の強さを測定するために開発されたものが、リターンポテンシャルモデルです。心理学者のJ・M・ジャクソンが考案しました。
【リターンポテンシャルモデルとは】
集団が持つ規範の強さを測定する方法のこと。
具体的にはある行動に対して、どれほど望ましいかを集団内のメンバーに評価してもらい、規範の強さを測定します。縦軸には「評価の点数」を、横軸には「行動の内容」を表します。
リターンポテンシャルモデルの具体例
ここでは「出社する時間」を例にして、リターンポテンシャルモデルを説明します。たとえばA社とB社の集団規範を比較した結果、以下のような内容になったとします。
A社 | B社 | |
---|---|---|
10分前 | +4点 | -3点 |
20分前 | +3点 | -2点 |
30分前 | +1点 | ±0点 |
40分前 | -1点 | +2点 |
50分前 | -2点 | +3点 |
1時間前 | -3点 | +4点 |
A社の場合、集団内のメンバーが最も望ましいと考えているのは「10分前」です。また「10〜30分前」であれば、許容できるという集団規範が存在しています。
一方でB社の場合、集団内のメンバー最も望ましいと考えているのは「1時間前」です。また早く出社するほど、評価が高くなることがわかります。
つまりこのリターンポテンシャルモデルの場合、A社では10分前に出社しても問題なく、B社では遅くても30分前には出社しないといけない雰囲気があることを表しています。
リターンポテンシャル曲線からわかること
各項目の点数を曲線でつないだものを「リターンポテンシャル曲線」といいます。
リターンポテンシャル曲線を分析することで、形成されている集団規範の特徴がわかります。ここでは具体的に、どのような内容を読み取れるのか、簡単にまとめてみました。
最大リターン点 | 【最も点数の高い項目】 集団内のメンバーが最も望ましいと考えている行動を表す |
---|---|
許容範囲 | 【0とプラス評価の範囲】 集団内のメンバーが許容できる範囲を表す |
強度 | 【各評価の絶対値の合計】 規範の強さ・周りからの圧力の大きさを表す |
是-否認差 ポテンシャル・リターン差 | 【各評価の合計】 規範が賞賛されやすいか・否認されやすいかを表す |
結晶度 | 【各行動の評価値の分散】 メンバー間の認識がどれほど一致しているかを表す |
規範の結晶度とは、簡単にいえば集団凝集性のことです。結晶度が高いほど、グループの結束力が高いことを表しており、同調が起こりやすくなります。
ちなみに佐々木(1982)は、これら以外にも「私的見解」「規範の虚構性」などを説明しています。リターンポテンシャルモデルを勉強したい人は、確認しておくと良いでしょう。
リターンポテンシャルモデルの意味・具体例まとめ
今回は心理学のリターンポテンシャルモデルについて、わかりやすくまとめてみました。
リターンポテンシャルモデルの意味は、以下のとおりです。ある行動に対して、どれほど望ましいかを集団内のメンバーに評価してもらい、規範の強さを測定します。
【リターンポテンシャルモデルとは】
集団が持つ規範の強さを測定する方法のこと。
またグラフの曲線から、集団内のメンバーが最も望ましいと考えている行動・許容範囲・結晶度などを読み取れます。具体例をもとに、測定方法も確認しておくと良いでしょう。
リターンポテンシャルモデルの理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
リターンポテンシャルモデルに関係する参考書籍
現代社会心理学の発展Ⅰ
『現代社会心理学の発展』は、社会心理学に関する論文をまとめた本です。集団規範に関する項目で、リターンポテンシャルモデルの説明があります(p151〜p176)。
リターンポテンシャル曲線から読み取れることについては、佐々木(1982)の論文を参考にしました。かなり古い本で、研究者向けの内容だと思います。
リターンポテンシャルモデルに関係する参考文献
・人を惑わす集団エージェント ~擬人化エージェントによる集団圧力生成の試み~
・情報通信業の技術者集団における集団規範が職業性ストレスに及ぼす影響における心理的安全性の媒介効果
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