集団規範とは、「集団の中で共有されている行動基準」のことを意味します。新人が電話に出る・1時間前には出社するのような、集団独自のルールが存在するイメージです。
学校や職場をはじめ、集団規範が形成されている例は多く見られます。しかし規範が強すぎると、いじめなどの問題にもつながるので注意が必要でしょう。
そこで今回は、集団規範とは何かをわかりやすくまとめてみました。心理学の意味・具体例についても簡単に説明しています。
また集団規範に関係する心理学実験にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
集団規範とは?心理学の意味をわかりやすく解説
集団規範とは社会心理学の用語で、「集団の中で共有されている行動基準」を意味するものです。明言されていなくても、暗黙のルールとして存在する場合は多くあります。
【集団規範とは】
集団の中で共有されている行動基準のこと。
集団規範のあるグループでは、ほかのメンバーの行動を予測でき、コミュニケーションもとりやすくなります。組織として安定するところも、メリットのひとつです。
しかし周りから嫌われることを避けようと、同調が起こることもあります。その結果、仲間集団に従うことを優先し、意思決定に影響が出てしまうケースも考えられるでしょう。
つまり集団規範が強すぎると、デメリットが生じる可能性もあるというわけです。一般的に集団凝集性が高いと、集団規範も強くなるといわれてます。
シェリフが行った集団規範の心理学実験
集団規範に関係する実験として、心理学者のシェリフが行った研究があります。
これは被験者を真っ暗な部屋に入れて、「暗闇の中で光がどれくらい動いたかを回答する」という内容です。1人で参加する場合と、2〜3人で参加する場合に分けて実施します。
すると、1人で参加した場合の回答はバラバラで、それぞれの数値に差が出ました。一方で2〜3人で参加した場合は、回数を重ねるごとに全員の回答が近づいたのです。
つまりこれは、実験を通して集団規範が形成されたことを表しています。その結果、周りに合わせた方が良いと感じて、似たような回答になったのだと考えられます。
ちなみに、このときの被験者には、同調することを求められるような見えない力が働いています。これを心理学では、「斉一性の圧力」といいます。
集団規範が形成されている具体例を簡単に説明
集団規範の具体例は、部活動を想像するとわかりやすいでしょう。「準備や片付けは1年生が行う」などの暗黙のルールがあるイメージです。
また学校のいじめ問題も、「集団規範から逸脱している」と認識されることで起こります。容姿や能力が、集団内のほかのメンバーと異なるだけで、仲間はずれにされてしまうのです。
ちなみに職場の場合も同じで、残業すべき・休みを取らづらいなどの雰囲気を感じることがあると思います。そして社員全員が従うことで、集団規範はより強化されます。
特に日本は、同調を求める社会的圧力が強いといわれているため、集団規範が形成されやすいと考えられます。
集団規範と関係する「リターン・ポテンシャル・モデル」
心理学には、集団規範の強さをモデル化した「リターン・ポテンシャル・モデル」があります。
これは「ある行動に対して、どれほど望ましいかをメンバーに評価してもらう」というものです。それによって、集団規範の強さを測定することができます。
たとえば10時に待ち合わせをするとして、何分前に到着すれば良いかをメンバーに聞きます。このとき、以下のような結果が出たとします。
ちょうど | -3点 |
---|---|
5分前 | +1点 |
10分前 | +4点 |
15分前 | +3点 |
20分前 | ±1点 |
25分前 | -1点 |
30分前 | -3点 |
この結果、グループが最も望ましいと考えているのは「10分前」です。そしてマイナスの評価にならない「5〜20分前」であれば許容できるという集団規範が存在しています。
つまりリターン・ポテンシャル・モデルを用いることで、許容範囲も明らかになるというわけです。集団規範について勉強する際には、あわせて確認しておくと良いでしょう。
集団規範の意味・具体例・メリット・デメリットまとめ
今回は心理学の集団規範について、わかりやすくまとめてみました。
集団規範の意味は、以下のとおりです。集団内に存在する暗黙のルールのようなイメージで、学校や職場で見られる身近な例も多くあります。
【集団規範とは】
集団の中で共有されている行動基準のこと。
集団規範のあるグループは、組織として安定しているなどの特徴があります。しかし規範が強すぎると、意思決定に影響が出てしまうデメリットもあるので注意が必要です。
集団規範の理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
集団規範に関係する参考書籍
・社会的規範と集団規範のずれによる 規範逸脱に対する自己評価や感情の変化
※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。
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