心理学の強化とは、「行動の頻度を高める原理や手続き」を意味する用語です。正の強化・負の強化など、行動が強化する仕組みを説明するときに使われます。
しかし具体例がないと、意味を間違えやすいので注意が必要です。そこで今回は、心理学の強化とは何かを、わかりやすくまとめてみました。
また正の強化・負の強化についても、具体的な行動例で簡単に解説しています。オペラント条件づけなど、学習の仕組みを理解する際にも役立つので、ぜひ参考にしてみてください。
心理学の強化とは?意味をわかりやすく解説
そもそも心理学の場合、強化とは行動分析学や学習理論などで使われます。「行動の頻度を高める原理や手続き」そのものを意味する用語です。
強化の研究では、「ある刺激を提示した結果、行動が強化されているか」を調べます。そしてこのとき、行動を強化した刺激のことを「強化子」といいます。
【強化とは】
「行動の頻度を高める原理や手続き」そのものを意味する。強化子が提示された結果、行動の頻度が高まっていれば、その行動は強化されたといえる。
ちなみに、強化の対象はあくまでも「行動」になっています。人や動物そのものを強化しているわけではないので、注意してください。
強化の具体例(正の強化・負の強化)
行動の頻度が高まるといっても、「報酬をもらえる」ことで強化される場合もあれば、「不快を取り除ける」ことで強化される場合もあります。
なのでここからは、行動の強化について、具体例と一緒に解説します。
正の強化:報酬をもらえることで行動が増える
報酬をもらえることにより、行動の頻度が高まる場合は、正の強化といいます。
たとえば行動した後にほめてもらえたり、何かを手に入れられたりすると、その行動を起こしやすくなります。
【正の強化の具体例】
・電車で席を譲ったら感謝された
・化粧水をつけたら肌が保湿された
・お手伝いをしたらお小遣いをもらえた
直前 | 行動 | 直後 |
---|---|---|
感謝なし | 席を譲る | 感謝あり |
保湿なし | 化粧水をつける | 保湿あり |
お小遣いなし | お手伝いをする | お小遣いあり |
負の強化:不快を取り除けることで行動が増える
一方で不快を避けられることにより、行動の頻度が上がる場合は、負の強化といいます。
「負=行動が弱まる」とイメージする人も多いので、間違わないように注意しましょう。
【負の強化の具体例】
・寒いのでコタツをつけたら温かくなった
・眠いのでコーヒーを飲んだら目が覚めた
・雨で濡れるので傘をさしたら濡れなくなった
直前 | 行動 | 直後 |
---|---|---|
寒さあり | コタツに手を入れる | 寒さなし |
眠い | コーヒーを飲む | 眠くない |
濡れる | 傘をさす | 濡れない |
参考:強化と罰の違いを簡単に解説
行動の頻度が増えるのが「強化」である一方、行動の頻度が減ってしまうのは「罰」といいます。そして罰にも、正の罰と負の罰があります。
嫌悪的な刺激を提示して、行動の頻度が減るのは正の罰です。報酬をもらえなくなり、行動の頻度が減るのは負の罰になります。
心理学において、強化と罰は混同しやすく注意が必要です。行動が増えるのか減るのかを、正しく理解するようにしましょう。
具体例 | 行動の増減 | |
---|---|---|
正の強化 | 報酬をもらえる | 行動↑ |
負の強化 | 不快を取り除ける | 行動↑ |
正の罰 | 嫌悪刺激がある | 行動↓ |
負の罰 | 報酬がなくなる | 行動↓ |
強化の別名について(好子・嫌子)
心理学のテキストによっては、強化の仕組みを説明するために、「好子・嫌子」という言葉が使われるケースもあります。
これは先ほどもお伝えしたように、「負=行動が弱まる」とイメージする人が多いため、わかりやすくすることを目的にしています。意味は以下のとおりです。
別名 | 行動の増減 | |
---|---|---|
正の強化 | 好子出現による強化 | 行動↑ |
負の強化 | 機子消失による強化 | 行動↑ |
正の罰 | 嫌子出現による弱化 | 行動↓ |
負の罰 | 好子消失による弱化 | 行動↓ |
心理学の正の強化・負の強化まとめ
ここでは心理学の強化とは何か、具体例でわかりやすくまとめてみました。
心理学における強化の意味は、以下のとおりです。正の強化・負の強化など、行動が強化する仕組みを説明するときに使われます。
【強化とは】
「行動の頻度を高める原理や手続き」そのものを意味する。強化子が提示された結果、行動の頻度が高まっていれば、その行動は強化されたといえる。
そして強化の意味は混同しやすいので、具体例と一緒に覚えるのがおすすめです。オペラント条件づけなど、学習の仕組みを理解する際に役立つでしょう。
心理学の強化について、理解を深めるためにも、ぜひここで解説した内容を参考にしてみてください。
関連記事:心理学の強化子とは
強化に関する参考書籍
強化に関する書籍として、「行動分析学入門」などがあります。
この本では、正の強化・負の強化の仕組みが、具体例と一緒にまとめられています。強化の代わりに、好子・嫌子という言葉が使われていますが、仕組みはわかりやすいのでおすすめです。
教科書のようにサイズは大きく、ページ数も多いので、しっかり勉強したい人向けだといえます。気になる人は、ぜひ一度チェックしてみてください。
強化に関する参考文献
・自由オペラント法の基本的強化スケジュールに相当する離散試行型選択法の強化スケジュールについて
※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。
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