アサーションとは、「自分も相手も大切にした自己表現」のことです。コミュニケーションスキルとしても注目されており、自己啓発本・職場の研修などでもよく見かけます。
そこで今回はアサーションについて、心理学の意味・具体的な事例などをわかりやすくまとめてみました。タイプ別の特徴も、それぞれ簡単に紹介しています。
またアサーションスキルの鍛え方や、アサーティブとの違いにも触れているので、ぜひ参考にしてみください。
アサーションとは?意味をわかりやすく解説
そもそもアサーションとは、英語の「assertion(主張・断言)」からきています。「自分も相手も大切にした自己表現」を意味する心理学用語です。
【アサーション(assertion)とは】
「自分も相手も大切にした自己表現」を意味する心理学用語。行動療法がもとになっており、コミュニケーションスキルとしても注目されている。
アサーションの発祥は1950年代のアメリカで、考え方や技法は行動療法がもとになっています。 そして人種差別・性差別などの抗議運動をきっかけに、1970年代から広まりました。
日本にアサーションが持ち込まれたのは、1980年以降です。平木典子によって紹介され、それ以降、重要なコミュニケーションスキルとしても注目されるようになりました。
アサーションのタイプ別の特徴
アサーションには、大きく分けて3つの型があります。ここではタイプ別に、それぞれの特徴をまとめてみました。
まずは自分が、どのタイプに当てはまりそうか、簡単にチェックしてみてください。
タイプ1:非主張型(ノン・アサーティブ)
このタイプは自分よりも他者を優先するなど、自己犠牲的な傾向があり、相手に尽くしがちです。場合によっては、服従的・依存的な人間関係も見られるでしょう。
一方で自分のことは後回しになり、嫌なことがあっても、黙ったり我慢したりするのが特徴です。そのため、自尊心が低い・自己否定的・引っ込み思案などの傾向が見られます。
タイプ2:攻撃型(アグレッシブ)
このタイプは、自分のことだけを考える傾向にあります。一方的に主張することが多く、何か失敗をしても強がったり、責任転嫁をしたりするのが特徴です。
そして他人のことは無頓着で、話を聞かない・否定する・見下して支配的になる様子も見られます。またいきなり怒鳴ったり、暴力的になったりもします。
具体例として、ドラえもんのジャイアンをイメージするとわかりやすいでしょう。
タイプ3:アサーティブ
アサーティブとは、非主張型や攻撃型と違って、自分・相手どちらも大切にします。そのためアサーションとは、このタイプのことを表しています。
たとえば自分の行動に責任を持ち、自発的に動きます。また自分の気持ちに正直で、話すべきことをしっかり伝えられるところも特徴のひとつです。
相手に対しては、話を聞いて歩み寄ろうとする傾向があります。たとえ意見が食い違っても、柔軟に対応し、解決策を見つけようとするでしょう。
アサーティブになるためのポイント
ではアサーティブになるためには、どのようにしたら良いのでしょうか。
ここからは、アサーションのポイントについて簡単に紹介していきます。5つの項目にわけてまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
1、自分の気持ちを把握する
実はアサーティブになれない理由のひとつに、自分の気持ちを把握できていない場合があります。無意識のうちに、欲望を抑制してしまっているのです。
そのためまずは、怖がらずに自己開示することが大切でしょう。自分の気持ちがわかるようになると、アサーティブな行動もしやすくなります。
2、周囲や結果を気にしない
アサーションで重要なことは、自分の言いたいことを適切に伝えることです。それを受け取るかどうかは相手次第であり、私たちが支配できるものではありません。
たとえばずっと相手の顔色をうかがっていると、何も言えなくなってしまうでしょう。またはストレスが溜まって、ほかの人にイライラをぶつける可能性も考えられます。
このように周囲や結果を気にしていると、アサーティブな行動はできないので注意が必要です。
3、アサーション権を使う
アサーション権とは、「誰もがアサーションする権利を持っていること」を意味します。この考え方は、自他尊重の自己表現を大切にするアサーションにおいて、とても重要です。
具体的なアサーション権の内容は、以下のとおりです。自分がこの権利を疎かにしていないか、確認してみてください。
・私たちは誰からも尊重され、大切にされる権利がある
・私たちは誰もが自分の行動を決め、その結果に責任をもつ権利がある
・私たちは誰でも過ちをし、それに責任をもつ権利がある
・私たちには、支払いに見合ったものを得る権利がある
・私たちには、自己主張をしない権利もある
4、アサーティブでない考え方を変える
たとえば子どもの頃に、両親や先生から「〜してはいけない」と怒られた人もいるかと思います。また「〜すべきだ」と、厳しく言われた人もいるでしょう。
このような固定概念は、いつの間にか、自分の中で当たり前になっています。それにより、自己表現や行動が制限されてしまう場合があるのです。
そのためアサーティブでない考え方は、変える必要があります。
5、アサーションスキルを習得する
私たちは家庭・学校・職場など、さまざまな人間関係の中で、コミュニケーション方法を身につけてきました。しかしそれが、正しいアサーションスキルなのかはわかりません。
アサーションスキルは、トレーニングすることで習得できます。もし今の段階で、アサーティブになれていない人も安心してください。
アサーションスキルのトレーニング方法は?
アサーションスキルを鍛える方法はいくつかあります。その中でも代表的なのが、ロールプレイによるトレーニングです。
ロールプレイでは自分がアサーティブになれない場面を想定して、繰り返し練習しながら、新しい自己表現方法を見つけます。また自分が相手役になることもあります。
このとき、アサーティブな考え方だけでなく、言語表現・非言語表現も重要です。詳しいトレーニングの内容は、別の記事でまとめているので、気になる人はチェックしてみてください。
アサーションの事例を簡単に説明
ここでは、日常生活でも見られるアサーションの事例をいくつか挙げてみました。
たとえばレストランに行ったとき、食事に髪の毛が入っていたとします。アサーティブな人と、そうではない人では、以下のような違いがあります。
非主張型 | 【店員に何もいえない】 ・変な目で見られるかも。 ・嫌な気分のまま帰る。 |
攻撃型 | 【店員に怒鳴りつける】 ・食べられないだろ! ・早く取り替えてくれ! |
アサーティブ | 【丁寧に気持ちを伝える】 ・髪の毛が入っていまして。 ・取り替えてもらえますか? |
またアサーションは、コミュニケーションスキルとしても認知されています。そのため医療・看護の現場だけでなく、学校や職場の人間関係でも、アサーティブな対応が求められます。
ここでは、無断で遅刻をした後輩に注意するという事例を考えてみましょう。
非主張型 | 【後輩に何もいえない】 ・どうせ言っても聞かない。 ・陰口を言われたら嫌だな。 |
攻撃型 | 【何も聞かずに怒鳴る】 ・遅刻なんてありえない! ・言い訳は聞きたくない! |
アサーティブ | 【話を聞いてから主張する】 ・何かあったのか? ・事前に連絡はしてほしい。 |
参考:アサーションとアサーティブの違い
アサーションとアサーティブの違いは、ほとんどありません。どちらも「自分も相手も大切にした自己表現(コミュニケーション)」を意味しています。
強いていえば、言葉の使い方が異なります。アサーションは名詞ですが、アサーティブは形容詞なので、「アサーティブな行動・態度」のように使います。
ちなみに「アサーティブネス」という言葉もあります。こちらもアサーションとの大きな違いはなく、ほぼ同じ意味で使われるので、覚えておくと良いでしょう。
心理学のアサーションの意味・具体例まとめ
今回は心理学のアサーションについて、わかりやすくまとめてみました。
アサーションの意味は、以下のとおりです。言うのを我慢したり、自己中心的になったりするのではなく、自他尊重のコミュニケーションを目指します。
【アサーション(assertion)とは】
「自分も相手も大切にした自己表現」を意味する心理学用語。行動療法がもとになっており、コミュニケーションスキルとしても注目されている。
アサーションは、人間関係を築くためにも重要なスキルです。日常生活にも役立つので、興味がある人はトレーニング方法を確認してみると良いでしょう。
アサーションについて、理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
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関連記事:アサーション・アサーティブ本のおすすめ
アサーションの参考書籍
アサーションに関する書籍として、「アサーション・トレーニング」などがあります。
これは平木典子が著者の本で、アサーションについてわかりやすくまとめられています。簡単なアサーション診断もあるので、実際に試してみると良いでしょう。
本の内容も200ページ程度で、比較的読みやすいと思います。初心者にもおすすめできるので、ぜひ一度チェックしてみてください。
アサーションの参考文献・組織
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