アサーショントレーニングとは、「自分も相手も大切にした自己表現」を鍛える方法です。ロールプレイをはじめ、簡単にできる実践方法はたくさんあります。
そこで今回は、アサーショントレーニングの方法を、わかりやすくまとめてみました。期待できる効果やメリットについても、簡単に紹介しています。
アサーショントレーニングの実践例もいくつか解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
アサーショントレーニングとは?
そもそもアサーショントレーニングとは、英語の「assertion(主張・断言)」からきています。「自分も相手も大切にした自己表現」を鍛えるための方法です。
もともとは、行動療法のひとつとして認知されていました。現在では幅広く活用されており、重要なコミュニケーションスキルとしても注目されています。
そのためアサーショントレーニングは、人間関係を築くときにも役立つのが特徴です。医療・看護の現場をはじめ、学校や職場など、さまざまな場所で研修が行われています。
アサーショントレーニングにおける3つのタイプ
人間の自己表現のタイプは、3タイプに分けられると言われています。このうち非主張型と攻撃型は、考え方が自分と相手のどちらかに偏っています。
一方でアサーティブは、自分と相手どちらも大切にするという考え方です。アサーショントレーニングでは、このアサーティブを目指すことになります。
非主張型 (ノン・アサーティブ) | 自分よりも他者を優先する ・自己否定的 ・言いたくても我慢する ・引っ込み思案など |
攻撃型 (アグレッシブ) | 自分のことだけを考える ・相手を見下す ・話を聞かない ・いきなり怒鳴るなど |
アサーティブ | 自分も相手も大切にできる ・自分に責任をもつ ・話をちゃんと聞く ・相手に歩み寄るなど |
アサーショントレーニングのメリット
ここからは、アサーショントレーニングのメリットについて解説します。今回は5つのポイントにまとめてみました。
アサーショントレーニングをする前に、一度確認してみてください。
1、自分に対して正直になれる
アサーショントレーニングをすると、自分に対して正直になれます。これは自己開示を通して、自分が思っていること・考えていることを理解しやすくなるためです。
その結果「〜したい」という欲求を、無理に抑制することがなくなります。また相手に「〜してほしい」と、素直に頼むこともできるでしょう。
2、周囲や結果が気にならなくなる
アサーティブになれば、相手を恐れたり、顔色をうかがったりすることがなくなります。我慢してイライラする気持ちも抑えられるでしょう。
また行動した結果も、あまり気にならなくなります。自分の価値観に沿って自己表現をしただけなので、自分を責める必要や、ほかの人と比較する必要がないのです。
3、自分も他人も大切にできる
アサーショントレーニングの重要な考え方のひとつに、アサーション権があります。これは「誰もがアサーションする権利を持っている」というものです。
具体的なアサーション権の内容は、以下のとおりです。これを理解することで、自分も相手も尊重し、大切にできます。
・私たちは誰からも尊重され、大切にされる権利がある
・私たちは誰もが自分の行動を決め、その結果に責任をもつ権利がある
・私たちは誰でも過ちをし、それに責任をもつ権利がある
・私たちには、支払いに見合ったものを得る権利がある
・私たちには、自己主張をしない権利もある
4、考え方が柔軟になる
アサーショントレーニングをすると、自分のアサーティブではない考え方にも気づくでしょう。具体的には「〜してはいけない」「〜すべきだ」などです。
このような固定概念がなくなれば、自己表現や行動が制限されることもなくなるでしょう。その結果、考え方もより柔軟になります。
5、自信を持ってコミュニケーションができる
自他を尊重するアサーションスキルは、人間関係を築くためにも重要です。家庭・学校・職場など、さまざまな場面で活かすことができます。
そのためアサーショントレーニングを行えば、自信を持ってコミュニケーションができるようになるでしょう。自己表現を恐れることもなくなります。
具体的なアサーショントレーニングの実践方法とは
ここからはアサーショントレーニングの実践方法として、ロールプレイ・DESC法・アイメッセージをまとめてみました。
アサーショントレーニングのなかには、簡単にできる方法も多いので、ぜひチェックしてみてください。
ロールプレイを実践する方法
アサーショントレーニングのなかでも代表的なのが、ロールプレイを行う実践方法です。自分が話す役になる場合もあれば、相手役になる場合もあります。
ロールプレイでは、自分が非主張型・攻撃型になってしまう場面を想定します。それを繰り返し練習することで、新しい自己表現方法を見つけるのが目的です。
アサーショントレーニングを実践する際には、考え方だけでなく、言語・非言語も意識してください。そうすることで、相手に対して適切な自己表現ができます。
考え方の アサーション | ・自分から積極的に話す ・相手の話もしっかり聞く ・アサーション権を意識する |
言語的 アサーション | ・自分のことを相手に伝える ・話題やテーマを変えてみる ・開かれた質問と閉ざされた質問 |
非言語的 アサーション | ・目線や表情に気をつける ・声の大きさを意識する ・聞きやすいスピードで話す |
DESC法を利用する方法
DESC法とは、自己表現の方法を4つのステップに分けたものです。順番に台詞を組み立てることで、簡単にアサーティブな表現ができます。
ちなみにDとEは、混同しやすいので注意が必要です。Dの段階では事実・状況などの「見たこと」を伝え、Eの段階で自分が「感じたこと」を主張します。
また親しい人間関係であれば、DESCすべてを伝えなくても良いでしょう。表現に困ったときやトレーニングでつまずいたときは、少し時間をかけて、台詞を考えてみてください。
D=Describe 描写する | ・ここは喫煙席に近いので 煙が流れてきますね。 |
E=Express 表現する | ・私は煙が苦手で、 喉が痛くなってきました。 ・あなたはタバコを 吸いたくなったかもしれませんね。 |
S=Specify 明確な提案をする | ・そろそろお店を出て ほかの場所に移動しませんか |
C=Choose 選択する | ・そうすれば私は助かりますし、 あなたも誘惑から逃れられます。 ・もしタバコを吸いたければ 一服してからお店を出ませんか。 |
「アイメッセージ」を意識する方法
アイメッセージとは、「私」を主語にした表現方法です。アイメッセージを意識しながら話すと、自分の気持ちが明確になります。
また言葉の表現をやわらかくする目的もあります。そのため相手を否定したり、傷つけたりせず、自分の気持ちを伝えられるでしょう。
ちなみに「あなた」を主語にしたユーメッセージになると、言葉の表現がキツくなります。相手も尊重するアサーションとは、かけ離れてしまうので注意が必要です。
アイ メッセージ | (私は)そんな言い方をされると悲しい (私は)連絡してもらえると嬉しい (私は)違う方法を試すのもいいと思う |
ユー メッセージ | (あなたは)そんな言い方をするな (あなたは)早く連絡すべきだ (あなたは)違う方法でやりなさい |
アサーショントレーニングの実践例
ここではアサーショントレーニングを実践するために、いくつか例題をあげてみました。まずはどのような行動がアサーティブなのか、考えてみてください。
たとえばレジで並んでいたとき、ほかの人が横から割り込んできたとします。アサーティブな人と、そうではない人では、どのような違いがあるでしょうか。
非主張型 | 【相手に何もいえない】 ・自分が我慢すればいいや。 ・逆ギレされたらめんどくさい。 |
攻撃型 | 【相手に怒鳴りつける】 ・いきなり割り込むなよ! ・並んでいるのがわからないか! |
アサーティブ | 【丁寧かつ正直に伝える】 ・すみません私も並んでいます。 ・順番は守ってもらえますか? |
また自分の仕事が終わらなくて忙しいにも関わらず、後輩から質問されたとします。そんなときでも、アサーティブな対応ができるでしょうか。
非主張型 | 【後輩に何もいえない】 ・忙しいけど答えなきゃ。 ・悪口言われても嫌だし。 |
攻撃型 | 【話を聞かずに怒鳴りつける】 ・うるさい自分で考えろ! ・忙しいとき話しかけるな! |
アサーティブ | 【自分の気持ちも主張する】 ・ごめん今は仕事が忙しくて。 ・急ぎでなければ待ってほしい。 |
このようなアサーショントレーニングをするだけでも、アサーティブな考え方に気がつくと思います。ぜひさまざまな場面を想定しながら、実践してみてください。
アサーショントレーニングの方法まとめ
今回はアサーショントレーニングについて、わかりやすくまとめてみました。
アサーショントレーニングとは、「自分も相手も大切にした自己表現」を鍛える方法です。実践すれば、自信を持ってコミュニケーションができるようになります。
具体的にはロールプレイ・DESC法・アイメッセージなどで、事例もたくさんあります。アサーショントレーニングは、簡単にできる方法が多いので、ぜひ一度試してみてください。
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アサーショントレーニングの参考書籍
アサーショントレーニングに関する書籍として、「アサーション・トレーニング」などがあります。
これは日本にアサーションを広めた、平木典子が著者になっています。簡単なアサーション診断もあるので、実際に試してみると良いでしょう。
本の内容も200ページ程度で、比較的読みやすいと思います。初心者にもおすすめできるので、ぜひ一度チェックしてみてください。
アサーショントレーニングの参考文献・組織
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