ボウルビィの愛着理論(アタッチメント理論)とは?愛着行動を簡単に解説

ボウルビィの愛着理論(アタッチメント理論)とは

愛着理論とは、「母親(養育者)の世話・養育を求める乳児の行動」を意味する心理学用語です。発達段階によって、見られる愛着行動は異なります。

そこで今回は、ボウルビィの愛着理論(アタッチメント理論)をわかりやすくまとめました。愛着行動の4つの発達段階・パターンなども、簡単に紹介しています。

また愛着行動に関する実験例にも触れているので、一緒に確認しておくと良いでしょう。発達心理学を研究する際には、ぜひ参考にしてみてください。

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愛着理論(アタッチメント理論)とは?わかりやすく解説

そもそも愛着理論とは、精神科医のジョン・ボウルビィが提唱したものです。愛着を意味する「アタッチメント(attachment)」を用いて、アタッチメント理論と呼ぶこともあります。

ボウルビィは、「母親(養育者)の世話・養育を求める乳児の行動」を愛着行動と名づけました。そのため発達心理学において、重要な概念となっています。

【愛着理論(アタッチメント理論)とは】
「母親(養育者)の世話・養育を求める乳児の行動」のこと。精神科医のジョン・ボウルビィが提唱した概念。

またボウルビィは、愛着行動のパターンを3つに分けています。そして子どもが成長して、内面的なアタッチメントが形成・発達すると、愛着行動は減っていくとしました。

発信行動泣く・笑う・声を出すなど
定位行動目で追う・接近するなど
経済的身体接触行動抱きつく・よじ登るなど

ボウルビィが愛着理論を提唱した理由

当時ボウルビィは、戦争孤児の「ホスピタリズム(施設症)」を研究していました。これは施設で長期間生活することによって、発達上の問題が生じることを表します。

ボウルビィは、この原因を「マターナルデプリベーション(母性剥奪)」だと考えました。つまり母性的な養育の欠如によって、身体的・精神的な症状が出ているとしたのです。

そしてボウルビィは愛着理論を提唱し、子どもの愛着行動・アタッチメントの発達について注目するようになりました。

愛着行動の4つの発達段階を簡単に説明

子どもの愛着行動の発達過程には、4段階あると言われています。そして内面的なアタッチメントが形成・発達するにつれて、愛着行動は徐々に減っていきます。

ここでは発達段階ごとに見られる愛着行動や、それぞれの特徴について、簡単にまとめてみました。どのような違いがあるのか、ぜひ比較してみてください。

第1段階【生まれてから生後12週ごろまで】
発信行動・定位行動が見られる
養育者との区別はしていない
第2段階【生後12周から6ヶ月ごろまで】
発信行動・定位行動が見られる
特定の人とほかの人を区別する
第3段階【生後6ヶ月から2、3歳ごろまで】
知ってる人。見知らぬ人を区別する
養育者に積極的な愛着行動をとる
養育者を安全基地にして周囲を探索する
第4段階【3歳以降】
アタッチメントの対象が内在化する
それにより愛着行動が徐々に減少する

第1段階の愛着行動・アタッチメント

第1段階は、生まれてから生後12週ごろまでを指しています。

幼児は泣く・笑うなどの発信行動、目で追うなどの定位行動を見せます。しかし養育者との区別はなく、誰に対しても同じような愛着行動をするのが特徴です。

第2段階の愛着行動・アタッチメント

生後12周ごろから6ヶ月ごろになると、アタッチメントは第2段階に発達します。

幼児は養育者とほかの人を区別して、愛着行動を示すようになります。特に養育者に対しては、積極的に泣いたり発声したりするでしょう。

第3段階の愛着行動・アタッチメント

第3段階は、生後6ヶ月から2、3歳ごろまでを指しています。

この頃になると、養育者をアタッチメントの対象として、はっきり認識しています。そのため、より積極的な愛着行動を見られるでしょう。

またハイハイや歩行ができるようになるのも、ちょうどこの頃です。そのため養育者に接近したり、養育者を安全拠点にして、周囲を探索したりします。

第4段階の愛着行動・アタッチメント

3歳以降になると、アタッチメントは第4段階に発達し、より大きな変化が見られます。

まず愛着の対象が内在化されるので、徐々に愛着行動が減少します。また養育者の考えを推測して、自分の行動を修正する様子も確認できるでしょう。

このような過程で、幼児の愛着行動は発達していきます。

愛着行動を通して「内的作業モデル」を構築する

子どもは愛着行動を通して、「養育者から安心感や愛護感を得られる」ということを学びます。そしてアタッチメントが内在化されます。

ボウルビィはこれを、「内的作業モデル(内的ワーキングモデル)」と呼びました。そして内的作業モデルは、自身の精神的安定や、他者との関係のとり方に関わってきます。

また幼少期に限らず、生涯にわたるものとして構築されます。つまり愛着行動は、安定した人間関係を築く基礎にもなっているのです。

愛着理論(アタッチメント理論)に関する心理学実験

愛着理論に関する心理学実験は、いくつかあります。ここでは具体例として、「代理母実験」と「ストレンジ・シチュエーション法」を簡単にまとめてみました。

どちらの内容も、発達心理学の代表的な実験として知られています。一緒に確認しておくと、ボウルビィの愛着理論を理解するうえで役立つでしょう。

ハーロウの「代理母実験」

愛着理論の根拠になった実験と言われているのが、ハーロウの代理母実験です。

この実験では、生まれたばかりの子ザルを、2種類の代理母模型があるカゴで飼育します。代理母の1つは針金製で、もう1つは布製です。

すると子ザルは、針金製の代理母から授乳していても、布製の代理母を好みました。つまり生理的欲求の充足(ミルクでお腹いっぱいになる)だけでは、愛着形成が不十分だと推測できます。

この結果から、接触(スキンシップ)による安心感が愛着形成に関わっていると、ハーロウは考えました。

関連記事:ハーロウの代理母実験とは?

エインズワースの「ストレンジ・シチュエーション法」

ストレンジ・シチュエーション法とは、乳幼児の愛着行動を測定する手続きのことです。乳幼児がいる部屋で、母親・実験者・見知らぬ人が出入りして、その反応を調べます。

このような状況下では、子どもの愛着行動が活性化します。そして愛着行動を観察した結果、4パターンのアタッチメントがあることを発見しました。

Aタイプ
回避型
養育者と離れても混乱しない
また再開しても無関心で
よそよそしい態度をする
Bタイプ
安定型
養育者と離れると混乱する
養育者と再会すれば安定する
Cタイプ
アンビバレント型
養育者と離れると激しく混乱する
養育者と再会したときは、
怒りを表す・不安定になる
Dタイプ
無秩序・無方向型
行動の一貫性に欠ける

ちなみにストレンジ・シチュエーション法は、「新奇場面法」や「SSP(Strange Situation Procedure)」とも呼ばれています。気になる方は、具体的な実験例もチェックしてみると良いでしょう。

関連記事:ストレンジ・シチュエーション法とは?

ボウルビィの愛着理論(アタッチメント理論)まとめ

今回は愛着理論(アタッチメント理論)について、わかりやすくまとめました。

ボウルビィの愛着理論の意味は、以下のとおりです。4つの発達段階があり、子どもによってアタッチメントのパターンも異なります。

【愛着理論(アタッチメント理論)とは】
「母親(養育者)の世話・養育を求める乳児の行動」のこと。精神科医のジョン・ボウルビィが提唱した概念。

また愛着理論は、発達心理学において重要な概念のひとつです。愛着行動に関する実験例もあるので、一緒に確認しておくと役立つでしょう。

ボウルビィ愛着理論について、理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。

愛着理論(アタッチメント理論)の参考文献

J・ボウルビィにおける愛着理論の誕生

「愛着」〜対人関係や学習の機能的準備系

アタッチメント理論の現在

幼児の愛着の測定

ジョン・ボウルビィの愛着理論

母性的養育の喪失

愛情剝奪症候群の家族的社会的背景

成人愛着スタイルは成人の愛着行動パターンの違いを本当に反映しているのか?

成人における愛着ズタイルと愛着行動の状況間一貫性

恐れ型の愛着スタイルが対人場面における情動生起に及ぼす影響

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