アルバート坊やとは、恐怖条件づけの実験対象となった乳児のことです。
乳児に対して「鉄棒をハンマーで叩いて、音を鳴らしてから白ネズミを見せる」という行動を繰り返すと、乳児は白ネズミを見るだけで泣くようになります。
アルバート坊やの実験結果を把握しておくと、「古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)」を理解する際にも役立つでしょう。
ここではアルバート坊やの実験を、わかりやすく説明しています。アルバート坊やが、その後どうなったかについても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
アルバート坊やの実験とは?
そもそもアルバート坊やとは、条件づけの研究で対象となった乳児のことです。心理学者のワトソンとレイナーが、実験を行いました。
ワトソンは、人間に恐怖心を植え付けられるかを研究しようとします。そこで白ネズミを見せてから大きい音を鳴らし、乳児の恐怖反応を調査しました。
【アルバート坊やとは】
アルバートという名前の乳児を対象に行った、条件づけの実験を表す。「白ネズミを見せてから大きい音を鳴らす」という行動を繰り返すと、乳児が白ネズミを見ただけで、恐怖反応を示すようになる現象。
この研究結果からワトソンは、人間にも条件づけできることを発見します。しかしアルバート坊やの実験は、「乳児がかわいそう」などと批判を浴びていました。
※日本行動分析学会のページでは、実験の様子を再現した動画を視聴できます。
仕組みと実験結果をわかりやすく説明!
乳児が大きい音に対して、恐怖心を抱くのは、生まれながら持っている無条件反射です。この場合、鉄棒をハンマーで叩いた音を無条件刺激といいます。
そして「白ネズミを見せてから、鉄棒をハンマーで叩いて音を鳴らす」という手順を繰り返すと、アルバート坊やは白ネズミを怖がるようになりました。
このとき、恐怖心を誘発する白ネズミは条件刺激と言います。そして条件刺激によって誘発された反応(恐怖反応)が、条件反射です。
無条件反射 (UR) | 生物が生まれながらにして持っている反応 (例)大きな音に恐怖心をもつ |
無条件刺激 (US) | 無条件反射を引き起こす刺激 (例)鉄棒をハンマーで叩いた音 |
中性刺激 | 無条件反射を引き起こさない刺激 (例)白ネズミ |
条件反射 (CR) | 条件刺激によって誘発される反応のこと (例)白ネズミを見たことによる恐怖心 |
条件刺激 (CS) | 条件反射を引き起こす刺激のこと (例)恐怖心を誘発する白ネズミ ※もともとは中性刺激だったものが条件刺激になった |
UR:unconditioned response
US:unconditioned stimulus
CR:conditioned response
CS:conditioned stimulus
アルバート坊やの実験は「恐怖条件づけ」の一種
この実験のポイントは、本来関係のない中性刺激が、条件反射を引き起こしているという点です。アルバート坊やは最初、白ネズミを見ても、恐怖反応を示しませんでした。
しかし実験を繰り返すことで、「白ネズミを見たあとに大きな音が鳴る」という恐怖反応を条件づけられました。このような一連の流れを、恐怖条件づけと言います。
ちなみにアルバート坊やの実験は、パブロフの犬の実験がもとになっています。犬に条件づけできたことから「ヒトにも応用できるのでは」と、心理学者ワトソンが考えたそうです。
アルバート坊やはどうなった?乳児のその後とは
恐怖反応を条件づけられたアルバート坊やは、白ネズミだけでなく、ウサギ・イヌ・毛のついたお面・脱脂綿なども怖がるようになります。
そのためワトソンは、条件づけによって形成された反応を取り除こうとします(消去)。しかしアルバート坊やは、治療する前に病院から逃げてしまいました。
その後の行方については、不明となっています。可能性が高いのは、1987年に亡くなったアルバート・バーガー氏だと考えられていますが、確認は取れていないそうです。
アルバート坊やの実験による恐怖条件づけのまとめ
ここではアルバート坊やの実験について、わかりやすくまとめてみました。
アルバート坊やの説明は以下のとおりです。パブロフの犬の実験がもとになっており、心理学者のワトソンとレイナーが行いました。
【アルバート坊やとは】
アルバートという名前の乳児を対象に行った、条件づけの実験を表す。「白ネズミを見せてから大きい音を鳴らす」という行動を繰り返すと、乳児が白ネズミを見ただけで、恐怖反応を示すようになる現象。
当時から倫理的な批判があった実験で、アルバート坊やがその後どうなったかは不明です。しかしこれにより、人間にも条件づけできることが発見され、行動主義は発展しました。
そのため、行動主義心理学や古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)を学ぶうえでは、一度確認しておくと良いでしょう。ぜひここで解説した内容を参考にしてみてください。
アルバート坊やの参考書籍
アルバート坊やに関する書籍として、「パブロフの犬:実験でたどる心理学の歴史」などがあります。
この本ではアルバート坊やの実験だけでなく、パブロフの犬など、行動主義心理学のさまざまな実験について紹介されていました。ひとつあたり、3〜4ページで解説されています。
また行動分析学・行動療法などを学ぶなら、「行動分析学入門」もおすすめです。この本では、行動の強化の仕組みが、具体例と一緒にわかりやすくまとめられています。
教科書のようにサイズは大きく、ページ数も多いので、しっかり勉強したい人向けだといえます。気になる人は、ぜひ一度チェックしてみてください。
アルバート坊やの参考文献
※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。
※文章や画像を引用していただいても構いません。その際にはサイト名を明記のうえ、該当記事へ飛べるようにURLの設置をお願いいたします(詳しくは「引用・著作権について」をご確認ください)。