囚人のジレンマとは?心理学の意味・日常の具体例をわかりやすく解説

囚人のジレンマとは

囚人のジレンマとは、「個人の利益・社会全体の利益が対立して葛藤状態にある様子を、囚人の話にたとえて説明したもの」です。

これは社会心理学・行動経済学など幅広く活用されており、囚人のジレンマを描いた漫画・映画もあります。身近な日常例も多いので、意味を確認しておくと良いでしょう。

そこで今回は、囚人のジレンマとは何かをわかりやすくまとめてみました。心理学の意味や具体例についても簡単に紹介しています。

また囚人のジレンマの解決方法にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。

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囚人のジレンマとは?心理学の意味をわかりやすく解説

そもそも世の中には、人の行動を数学的に研究する「ゲーム理論」というものがあります。囚人のジレンマは、そんなゲーム理論におけるゲームのひとつです。

囚人のジレンマでは、相手に協力するか、協力しないかを選択できる内容になっています。もし協力しない方を選ぶと、協力するよりもメリットが大きくなる仕組みです。

しかし両者が裏切った場合、お互いに協力するときと比較して、結果が悪くなってしまいます。このような葛藤状態を、囚人のジレンマは表現しています。

囚人のジレンマ・ゲームの内容
  • 個人は協力する、協力しない(裏切る)を選べる
  • 個人は協力するよりも、裏切る方が良い結果を得られる
  • 両者が裏切る場合、お互いに協力するよりも結果は悪くなる

ちなみに、個人の利益・社会全体の利益が対立して葛藤状態にある様子を「社会的ジレンマ」といいます。囚人のジレンマも、この社会的ジレンマを説明した例のひとつです。

【囚人のジレンマとは】
個人の利益・社会全体の利益が対立して葛藤状態にある様子(社会的ジレンマ)を、囚人の話にたとえて説明したもの。ゲーム理論におけるゲームのひとつ。

ゲーム理論における囚人のジレンマの内容

囚人のジレンマでは、事件の容疑者の囚人A・Bに自白させることが目的です。2人は別々に取り調べを受けており、互いに相談ができない状況で、以下の取引を持ちかけられます。

  • 2人とも自白した場合
    →判決通りに懲役10年
  • 2人とも黙秘した場合
    →懲役1年に刑罰が軽くなる
  • 片方だけが自白した場合
    →自白した人を釈放、黙秘した人は懲役15年

このとき、囚人Aの視点で考えると「自白する方が良い」という結果になります。囚人Bがどちらを選んでも、黙秘するより刑罰が軽くなるのです。

【囚人B】
黙秘する
【囚人B】
自白する
【囚人A】
黙秘する
A:懲役1年
B:懲役1年
A:懲役15年
B:不起訴
【囚人A】
自白する
A:不起訴
B:懲役15年
A:懲役10年
B:懲役10年
  • 囚人Bが黙秘した場合
    →囚人Aは自白すると不起訴、黙秘すると懲役1年
  • 囚人Bが自白した場合
    →囚人Aは自白すると懲役10年、黙秘すると懲役15年

しかし囚人Aが自白すると、囚人Bを裏切ることになります。そのため自分の利益を優先して自白するか、仲間を信じて黙秘するかというジレンマが生じます。

囚人のジレンマに関係する「ナッシュ均衡」と「パレート最適」

囚人のジレンマの場合、ゲームを全体的に見たときの最適解は、囚人A・囚人Bが黙秘することです。どちらも懲役1年になり、刑罰を軽くすることができます。

このように誰も損することなく、全体の利益が最大化された状態のことを「パレート最適」といいます。もしそれ以上の利益を求める場合、誰かを犠牲にしなければなりません。

一方で囚人Aの視点で考えれば、最適解は自白することになります。囚人Bの選択に関係なく、黙秘するよりも刑罰が軽くなるため、裏切られるリスクを回避できるのです。

このように自分の利益が最大化された状態のこと「ナッシュ均衡」といいます。どちらも経済用語ですが、囚人のジレンマに関係するのでチェックしておくと良いでしょう。

【囚人B】
黙秘する
【囚人B】
自白する
【囚人A】
黙秘する
A:懲役1年
B:懲役1年
パレート最適
A:懲役15年
B:不起訴
【囚人A】
自白する
A:不起訴
B:懲役15年
A:懲役10年
B:懲役10年
ナッシュ均衡

日常で見られる囚人のジレンマの具体例

囚人のジレンマのような身近な例は、すぐには思いつかないかもしれません。しかし調べてみると、日常生活でもよく見られることがわかります。

たとえば、自社とライバル企業との間で起こる価格競争です。お互いに料金を安くして、自社だけが儲けようとすると、結果的に双方が疲弊してしまいます。

ほかにも環境問題や核兵器問題などでも、囚人のジレンマが発生します。自国の利益だけを考えている間は、問題を解決することは難しいでしょう。

ちなみに『ライアーゲーム』という漫画・映画は、囚人のジレンマを描いた内容になっています。ゲームの仕組みもわかりやすいので、気になる人はチェックしてみてください。

囚人のジレンマの解決方法は応報戦略(しっぺ返し戦略)

囚人のジレンマのゲームを1回だけ行う場合、両者ともに裏切るのが合理的です。しかし企業同士の価格競争のように、囚人のジレンマを何度も繰り返すような場面もあります。

そこで国際政治学者のロバート・アクセルロッドは、繰り返しゲームの場合、どのような戦略が良いのかを調査しました。実験では以下のような利得表を使用します。

【Bさん】
協力
【Bさん】
裏切り
【Aさん】
協力
A:40円
B:40円
A:0円
B:60円
【Aさん】
裏切り
A:60円
B:0円
A:20円
B:20円

まずゲーム用に、「毎回裏切る」「協力と裏切りを交互にする」など、あらゆる戦略プログラムを用意します。そしてプログラム同士を対戦させ、優勝を決めるというものです。

その結果、最初の1回目は協力して、2回目以降は相手に合わせるという戦略プログラムが優勝しました。このような戦略を「応報戦略(しっぺ返し戦略)」といいます。

つまり協力的な相手には協力し、非協力的な相手には協力しない方法が、得策であるということです。もし日常で囚人のジレンマが起きた場合は、参考にしてみると良いでしょう。

囚人のジレンマの意味・日常で見られる具体例まとめ

今回は心理学の囚人のジレンマについて、わかりやすくまとめました。

囚人のジレンマの意味は、以下のとおりです。社会心理学や行動経済学など、幅広く活用されており、身近で見られる日常例も多くあります。

【囚人のジレンマとは】
個人の利益・社会全体の利益が対立して葛藤状態にある様子(社会的ジレンマ)を、囚人の話にたとえて説明したもの。ゲーム理論におけるゲームのひとつ。

また囚人のジレンマの解決方法として、応報戦略(しっぺ返し戦略)を覚えておくと良いでしょう。経済用語についても確認しておけば、勉強の際に役立ちます。

囚人のジレンマの理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。

※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。

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