アッシュの同調実験とは、「集団に合わせて行動や考えを変えてしまう」という人間の同調行動を証明した実験のことです。
見本と同じ長さの線を選択するとき、正しくないとわかっていても、ほかの回答者に合わせて間違いを選択してしまいます。
アッシュの同調実験は、心理学研究の中でも有名で、多くの教科書やテキストに記載されています。特に社会心理学を勉強したい人は、知っておくと良いでしょう。
そこで今回はアッシュの同調実験とは何かをわかりやすくまとめてみました。実験内容・結果からわかったことを簡単に説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
アッシュの同調実験とは?心理学の意味をわかりやすく解説
そもそもアッシュの同調実験とは、アメリカの社会心理学であるソロモン・アッシュが1956年に実施した、同調に関する心理学実験のことを表しています。
実験内容は、「見本と同じ長さの線を3本の中から選ぶ」というものです。そして、自分以外の全員が誤った回答を選んだ場合、被験者がどのように判断するかを調査します。
すると被験者は、周りに合わせて誤った回答を選びました。アッシュはこの実験結果から、「集団に合わせて行動や考えを変えてしまう」という人間の同調行動を説明します。
【アッシュの同調実験とは】
心理学者のアッシュが行った、見本と同じ長さの線を選択する実験。「集団に合わせて行動や考えを変えてしまう」という人間の同調行動を証明した。
ちなみにアッシュは、初頭効果をはじめ、印象がどのように形成されるかを研究したことでも知られています。社会心理学の重要人物なので、覚えておくと良いでしょう。
アッシュの同調実験の内容・結果を簡単に説明
アッシュの同調実験は、8人の参加者(被験者と7人のサクラ)で行いました。実験では、長さが違う3本の線と、見本となる1本の線を用意します。
そして見本と同じ長さの線を、3本の中から選ぶという内容です。被験者は一番最後に回答するのですが、その前に7人のサクラが、全員誤った回答を選択します。
問題自体はとても簡単なので、1人の場合、間違える人はほとんどいません。しかしほかの7人全員が誤った回答を選ぶと、被験者の誤答率は32%まで上昇しました。
アッシュの同調実験の結果は、被験者がサクラの回答に同調してしまったことを表しています。自分以外の全員が誤った回答を選んだことで、それに合わせようとしたわけです。
このとき被験者には、同調することを求められるような見えない力が働いています。これを心理学では、「斉一性の圧力」といいます。
全員の回答が一致しない場合、同調する割合が減少する
アッシュの同調実験では、7人のサクラのうち、1人だけ正しい回答をする場合でも実験を行っています。すると、被験者の誤答率は5.5%まで減少しました。
これは「自分以外に反対する人がいる」とわかったことが影響していると考えられます。誤った回答に対する信憑性が下がり、被験者が同調する割合も減ったというわけです。
つまりこの実験結果は、同調が全員一致の場合に強くなることを表しています。そのため学校・会社などの集団では、同調行動の例がよく見られます。
アッシュの同調実験の意味・内容・結果まとめ
今回はアッシュの同調実験について、簡単にまとめてみました。
アッシュの同調実験の意味は、以下のとおりです。心理学研究の中でも有名で、多くの教科書やテキストに記載されています。
【アッシュの同調実験とは】
心理学者のアッシュが行った、見本と同じ長さの線を選択する実験。「集団に合わせて行動や考えを変えてしまう」という人間の同調行動を証明した。
またアッシュは実験結果から、同調が全員一致の場合に強くなることも説明しています。同調行動は日常でもよく見られるので、意味をしっかり確認しておくと良いでしょう。
アッシュの同調実験の理解を深めるためにも、ぜひここで紹介した内容を参考にしてみてください。
アッシュの同調実験に関する参考書籍
眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』は、社会で見られるさまざまな心理学を紹介しています。アッシュの同調実験については、同調に関する項目(p14)で紹介されていました。
右ページで解説、左ページで図解という構成になっており、文字数は少なめです。心理学の実験内容なども簡潔にまとめらているので、ざっくり内容を知りたい人におすすめします。
決定版 面白いほどよくわかる!心理学
『決定版 面白いほどよくわかる!心理学』は、心理学の歴史や専門用語をフルカラーでまとめた心理学本です。すべてのテーマに、図解やイラストがついています。
アッシュの同調実験については、人付き合いの心理学をまとめている項目(p60)で触れられていました。難しい言葉は使われておらず、初心者でも内容がわかりやすいと思います。
心理学 新版
『心理学 新版』には、大学から大学院レベルの心理学がまとめられている一冊です。社会的影響に関する章で、同調について解説されています(p402)。
同調してしまう理由や、斉一性についても内容も、この本に書かれていました。ページ数も多めですが、心理学の教科書やテキストが欲しい人にはぴったりだと思います。
図解 心理学用語大全
『図解 心理学用語大全』は、可愛らしくてわかりやすいイラストで、心理学用語が解説されています。すべての項目に図解がついており、視覚的に理解できるのが特徴です。
アッシュの同調実験についても、同調の項目で紹介されています(p236)。解説は1〜2ページ程度で、内容も簡潔にまとめられています。
※参考書籍や参考文献をもとに、筆者の見解を踏まえて内容をまとめております。
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